急性毒性
経口
【分類根拠】
(1)~(6)より、より有害性の高い区分を採用し、区分3とした。
【根拠データ】
(1)ラット(雄)のLD50:217 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2018))
(2)ラット(雌)のLD50:146 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2018))
(3)ラット(雄)のLD50:195 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2018))
(4)ラット(雌)のLD50:140~200 mg/kgの間(食安委 農薬評価書 (2014)、CLH Report (2018))
(5)ラット(雄)のLD50:417 mg/kg(CLH Report (2018))
(6)ラット(雌)のLD50:314 mg/kg(CLH Report (2018))
経皮
【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ラットのLD50:> 2,000 mg/kg(食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011))
吸入: ガス
【分類根拠】
GHSの定義における固体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】
(1)、(2)からは区分を特定できず、データ不足のため分類できない。
【根拠データ】
(1)ラットのLC50(4時間):> 0.3 mg/L(食安委 農薬評価書 (2014))
(2)ラットのLC50(4時間):> 1.15 mg/L(食安委 農薬評価書 (2014))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ウサギ(n=6)を用いた皮膚刺激性試験(GLP、4時間適用、72時間観察)において、全例で皮膚刺激性変化はみられなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011)、農薬抄録 (2015))。
(2)ウサギ(n=9)を用いた皮膚刺激性試験(4時間適用、3日観察)において、全例で皮膚刺激性変化はみられなかったとの報告がある(農薬工業会:「農薬時代」第173号 (1993))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】
(1)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)ウサギ(n=9)を用いた眼刺激性試験(GLP、72時間観察)において、非洗眼群で1~48時間後に軽微な結膜発赤がみられたが、72時間後には消失した(非洗眼群6例の角膜混濁スコアの平均:0、虹彩炎スコアの平均:0、結膜発赤スコアの平均:0.2、結膜浮腫スコアの平均:0)との報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011)、農薬抄録 (2015))。
呼吸器感作性
【分類根拠】
データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】
(1)、(2)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)モルモット(n=20)を用いたMaximisation試験(GLP、皮内投与:2.5%溶液)において、惹起24、48時間後の陽性率はともに0%(0/20例)であったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011)、農薬抄録 (2015))。
(2)モルモット(n=10)を用いたMaximisation試験(GLP、皮内投与:1%溶液)において、惹起24、48時間後の陽性率はともに0%(0/20例)であったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR (2011)、農薬抄録 (2015))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】
(1)~(8)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)マウスの骨髄細胞を用いた小核試験(GLP、単回経口投与)において、陰性の報告(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(2)ラットの骨髄細胞を用いた染色体異常試験(GLP、単回経口投与)において、陰性の報告(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(3)In vivo/in vitro試験系としてラットの肝細胞を用いた不定期DNA合成試験(単回経口投与)において、陰性の報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(4)細菌復帰突然変異試験(GLP)において、陰性との報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(5)ほ乳類培養細胞(CHO)を用いた遺伝子突然変異試験(GLP)において、陰性との報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(6)ほ乳類培養細胞(CHO及びCHL)を用いた染色体異常試験(GLP)において、陽性との報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(7)ラットの培養初代肝細胞を用いたUDS試験において、陰性との報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox Monograph (2011)、CLH Report (2018))。
(8)EUの最新評価では、in vivo及びin vitro結果から、証拠の重み付けにより本物質は遺伝毒性を有しないと考えられている(CLH Report (2018)、ECHA RAC Opinion (2020))。
発がん性
【分類根拠】
(1)~(3)より、区分に該当しない。
【根拠データ】
(1)国内外の分類機関による既存分類として、EPAではNL(Not Likely to be Carcinogenic to Humans)に分類されている(EPA Chemicals Evaluated for Carcinogenic Potential Annual Cancer Report 2018: 2001年分類)。
(2)ラットの2年間慢性毒性/発がん性併合試験(混餌投与)では、雌の高用量群において乳腺腺がんの発生頻度増加がみられたが、試験施設の背景データの範囲内であり、Fischerの直接確率検定では投与群と対照群との間に差異がないことから検体投与による影響ではないと判断された(JMPR Tox Monograph (2011))。その他、検体投与による腫瘍発生頻度の増加はなく、発がん性は認められなかった(食安委農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox. Monograph (2011))。
(3)マウスの18ヵ月間発がん性試験(混餌投与)では、発がん性は認められなかった(食安委 農薬評価書 (2014) 、農薬抄録 (2015)、JMPR Tox. Monograph (2011))。
生殖毒性
【分類根拠】
(1)~(6)より、区分2とした。
【根拠データ】
(1)ラットを用いた強制経口投与による発達神経毒性試験(GLP、妊娠6日~哺育21日)において、45 mg/kg/dayで親動物に一般毒性影響(死亡(1例)、体重増加抑制及び摂餌量減少等)、児動物に生後0~1日の生存率の低下、体重増加抑制(雌雄)及び聴覚驚愕反応の低下(雄)がみられたとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015))。なお、EFSAの評価では、1つ下の中用量投与の児動物の生後20日及び60日にも聴覚驚愕反応低下傾向がみられたとして保守的なNOAELの設定が提案された(EFSA (2013)、CLH Report (2018))。
(2)ラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験(GLP)において、800 ppmで親動物に一般毒性影響(体重増加抑制、摂餌量減少、肝細胞肥大等)、児動物に体重増加抑制(F1及びF2)、生存率低下(F2)がみられた。なお、繁殖能に対する影響は認められなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015) 、JMPR (2011))。
(3)(2)とは別のラットを用いた混餌投与による二世代生殖毒性試験(GLP)において、800 ppmで親動物に一般毒性影響(体重増加抑制、摂餌量減少)、F1及びF2児動物に体重増加抑制、生存率低下(哺育14及び21日)、F1児動物に包皮分離遅延、膣開口遅延、F2児動物に生存率低下(哺育4日)、離乳率低下、眼瞼開裂遅延、耳介開展の遅延傾向がみられた。なお、繁殖能に対する影響は認められなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015) )。
(4)ラットを用いた強制経口投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6~15日)において、50 mg/kg/dayで親動物に体重増加抑制、摂餌量減少、肝絶対及び比重量増加、腎比重量増加、児動物に第13 肋骨短縮化の頻度増加がみられたが、催奇形性は認められなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR (2011))。
(5)ウサギを用いた強制経口投与による発生毒性試験(GLP、妊娠6~18日)において、催奇形性は認められなかったとの報告がある(食安委 農薬評価書 (2014)、農薬抄録 (2015)、JMPR (2011))。
(6)CLH Reportでは、(3)の母体に影響のない用量での神経発達影響に加え、母体に影響のある用量での出生児の生存率低下、生後の発育遅延(雄児の包皮分離遅延等)によりRepr. 2を提案した(CLH Report (2018))。RACは神経発達毒性試験における中用量での聴覚驚愕反応低下は有意差がないとして否定したが、その他の発生影響は受容できるとして、Repr. 2は妥当との判断を示した。また、(3)の児動物にみられた離乳前の生存児数減少については、授乳による影響が検討されたが、出生後0日後に体重が減少していたことから、少なくとも子宮内ばく露が影響していることを示唆し、授乳を介した影響についてはデータが不十分であることから分類しないと結論付けた(ECHA RAC Opinion (2020))。