安全データシート

クロロホルム

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: クロロホルム
  • CB番号: CB5413313
  • CAS: 67-66-3
  • EINECS番号: 200-663-8
  • 同義語: クロロホルム,トリクロロメタン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: フッ素系冷媒、フッ素樹脂の製造、医薬反応溶媒、農薬反応溶媒、溶剤、試薬/フルオロカーボン原料、試薬、抽出溶剤、農薬、 医薬品 (NITE-CHRIPより引用)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
R4.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス(令和元年度改訂版(Ver2.0))を使用 ※一部、ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
急性毒性(経口)   区分4
急性毒性(吸入:蒸気)   区分3
皮膚腐食性/刺激性   区分2
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性   区分1
生殖細胞変異原性   区分2
発がん性   区分2
生殖毒性   区分2
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓)、区分3(麻酔作用)
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)
分類実施日(環境有害性)
ガイダンスVer.1.1 (GHS 4版, JIS Z7252:2014)
環境に対する有害性
水生環境有害性 短期(急性)   区分3
水生環境有害性 長期(慢性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS02GHS07GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H302 飲み込むと有害。
H315 皮膚刺激。
H319 強い眼刺激。
H331 吸入すると有毒。
H336 眠気又はめまいのおそれ。
H351 発がんのおそれの疑い。
H361 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い。
H372 長期にわたる、又は反復暴露による臓器 (肝臓, 腎臓) の障害。
H412 長期継続的影響によって水生生物に有害。
注意書き
安全対策
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P270 この製品を使用するときに,飲食又は喫煙をしないこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
P304 + P340 + P311 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念が ある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
保管
P405 施錠して保管すること。
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
P501 残余内容物・容器等は産業廃棄物として適正に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Trichloromethane
    Methylidyne trichloride
  • 化学特性(示性式、構造式 等): CHCl3
  • 分子量: 119.38 g/mol
  • CAS番号: 67-66-3
  • EC番号: 200-663-8
  • 化審法官報公示番号: 2-37
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 直ちに被災者を病院に連れて行く。 医師に相談する。
眼に入った場合
多量の水で15分以上よく洗浄し、医師の診察を受けること。
飲み込んだ場合
意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物, 塩化水素ガス

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

データなし

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

呼吸保護(服)を着用。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 安全な場所に避難する。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

不活性の吸収材に吸収させ、有害な廃棄物として処分する。 廃棄に備え適切な容器に入れて蓋をしておく。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

皮膚や眼への接触を避けること。 蒸気や噴霧の吸い込みを避けること。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 一度開けた容器は注意深く再度密封し、漏れを避けるためまっすぐ立てておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
ACL: 3 ppm - 作業環境評価基準、健康障害防止指
TWA: 10 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
皮膚、眼、そして衣服との接触を避ける。 休憩前や製品取扱い直後には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: フッ素ゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
飛沫への接触
材質: フッ素ゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、保護装置のタイプを選
択しなければならない。
呼吸用保護具
リスクアセスメントによりろ過式呼吸用保護具が適切であると示されている場所では、工学的
制御のバックアップとして、多目的直結式(US)またはAXBEK型(EN14387)呼吸用保護具
カートリッジ付き全面形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が唯一の保護手段である場合、
全面形送気マスクを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格
で試験され、認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

物理状態
液体 (20℃、1気圧) (GHS判定)
無色
臭い
特異臭、エーテル臭

融点/凝固点

-64 ℃(ICSC(2000)) -63 ℃(ICSC(2000)) -63.47 ℃(PubChem(2022))

沸点、初留点及び沸騰範囲

62 ℃(ICSC(2000)) 61 ℃(ICSC(2000)) 61~62 ℃(760.00mmHg)(PubChem(2022))

可燃性

不燃性(ICSC(2000))

爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界

?~12.9 vol%(推定値)(NITE総合検索 (2015))

引火点

引火点なし(PubChem(2022))

自然発火点

可燃性ではない(PubChem(2022))

分解温度

データなし

pH

データなし

動粘性率

データなし

溶解度

水: 0.8 g/100 ml(20℃)(ICSC(2000)、GESTIS(2022)) 水: 7.95X10+3 mg/L(25℃)(PubChem(2022)) PubChem(2022))

n-オクタノール/水分配係数

Log Kow: 1.97(ICSC(2000)、GESTIS(2022))

蒸気圧

212 kPa(20℃)(ICSC(2000)) 209 hPa(20℃)(GESTIS(2022)) 197 mm Hg(25℃)(PubChem(2022))

密度及び/又は相対密度

1.48 g/cm³(20℃)(GESTIS(2022)) 1.484 (20 ℃/20 ℃)(PubChem(2022))

相対ガス密度

4.12 (空気=1)(ICSC(2000)、GESTIS(2022)) 4.13 (危険物災害等支援システム(2022))

粒子特性

該当しない

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。
以下の安定剤が含まれている:
2-メチル-2-ブテン (0.003 %)

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

データなし

10.5 混触危険物質

多様なプラスチック, ゴム強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

有害な分解生成物が火があるとき生成される。 - 炭素酸化物, 塩化水素ガス
その他の分解生成物 - データなし
火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(4)より、区分4とした。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。
【根拠データ】 (1)ラット(雄)のLD50:908 mg/kg(OECD TG 401)(NITE初期リスク評価書 (2005)、食安委 清涼飲料水評価書 (2009)、DEF MAK (2000)) (2)ラット(雌)のLD50:1,117 mg/kg(OECD TG 401)(NITE初期リスク評価書 (2005)、食安委 清涼飲料水評価書 (2009)、DEF MAK (2000)) (3)ラット(雄)のLD50:445 mg/kg (NITE初期リスク評価書 (2005)、ASTDR ,(1997)、CLH Report (2010)) (4)ラット(雄)のLD50:2,000mg/kg(ASTDR (1997)、DFG MAK (2000)、NITE初期リスク評価書 (2005))
経皮
【分類根拠】 (1)より、ウサギのデータを採用し、区分に該当しないとした。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。
【根拠データ】 (1)ウサギのLD50:> 3,980 mg/kg(AICIS IMAP (2014))
【参考データ等】 (2)マウスのLD50:696~3245 mg/kgの間(CERI有害性評価書 (2006))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における液体であり、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 (1)~(3)より、有害性の高い区分を採用し、区分3とした。なお、ばく露濃度は飽和蒸気圧濃度 の90%(233,290 ppm)より低いため、蒸気と判断し、ppmVを単位とする基準値より判断した。新たな知見に基づき、分類結果を変更した。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直した(2021年)。
【根拠データ】 (1)ラットのLC50(6時間):9.2 g/m3(4時間換算値:11.3 g/m3、2310 ppm)(詳細リスク評価書 (2007)、EURAR (2007)、AICIS IMAP (2014)) (2)ラットのLC50(4時間):9,770 ppm(ATSDR (1997)、US AEGL (2012)) (3)ラットのLC50(4時間):47,702 mg/m3(9,775 ppm) (MOE初期評価 (1999))
【参考データ等】 (4)本物質はEU CLHにおいて、区分3に分類されている。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。旧分類からEUで急性毒性(吸入:蒸気)のGHS区分に変更があったため、急性毒性項目のみ見直したが、分類結果に変更はない(2021年)。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

ウサギを用いた皮膚刺激性試験において、本物質の原液を腹部皮膚に24時間適用した結果、軽度の充血、中等度の壊死及び痂皮形成がみられたとの報告 (EHC 163 (1994) や、NITE有害性評価書 (2008))、本物質の原液適用により重度の刺激性がみられたとの報告が (DFG vol.14 (2000)) ある。また、本物質をウサギの耳に1-4回適用した結果、軽微な充血及び表皮剥離がみられたとの報告がある (EHC 163 (1994)、NITE有害性評価書 (2008))。本物質は皮膚に対して刺激性を示すと記載がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、CICAD 58 (2004))。以上より、区分2とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Skin. Irrit. 2 H315」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。非可逆的な影響について情報が無いため区分を変更した。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

ウサギを用いた眼刺激性試験において、本物質を適用した結果、散瞳、角膜炎、角膜混濁を伴う強度の刺激性がみられ、4匹は2~3週間で症状が消えたが、1匹は3週間後以降にも角膜混濁の症状が残ったとの報告がある (EHC 163 (1994))。また、結膜への軽微な刺激及び角膜の障害がみられたとの報告 (EHC 163 (1994)、NITE有害性評価書 (2008)) や、本物質は眼に対して刺激性を持つとの記載がある (産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、CICAD 58 (2004))。以上、投与3週間後に完全に回復性しなかったことから区分1とした。なお、本物質はEU CLP分類において「Eye. Irrit. 2 H319」に分類されている (ECHA CL Inventory (Access on September 2015))。

呼吸器感作性

データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

データ不足のため分類できない。

生殖細胞変異原性

In vivoでは、トランスジェニックマウスの肝臓を用いた遺伝子突然変異試験で陰性、ラットの肝臓、腎臓細胞を用いた小核試験、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陽性あるいは陰性の結果、ラットの骨髄細胞、マウスの骨髄細胞、ハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験で概ね陽性、マウスの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果、ラットの腎臓を用いたDNA切断試験で陰性、ラット及びマウスの肝臓、腎臓を用いたDNA結合 (DNA付加体) 試験で弱陽性、陰性の結果、ラット、マウスの肝臓を用いた不定期DNA合成試験で陰性、マウスの肝臓、腎臓を用いたDNA修復試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、CICAD 58 (2004)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、CEPA (2001)、ATSDR (1997))。In vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、陽性の結果、哺乳類培養細胞の遺伝子突然変異試験、マウスリンフォーマ試験で陽性、陰性の結果、染色体異常試験で陰性、姉妹染色分体交換試験で陽性、陰性の結果、不定期DNA合成試験で陰性である (NITE有害性評価書 (2008)、EU-RAR (2007)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、ATSDR (1997)、CEPA (2001))。以上より、in vivo体細胞変異原性試験で陽性結果があり、ガイダンスに従い、区分2とした。

発がん性

ヒトでは本物質の飲料水を介した経口ばく露による疫学研究において、多部位のがん、特に膀胱がん、結・直腸がんの過剰リスクの報告例があるが、副生物のトリハロメタンによる影響の可能性が高いこと、また、職場での本物質吸入ばく露による発がん影響に関する報告は統計解析による検出力が低く、前立腺がん、肺がんの過剰リスクは信頼性に疑問があることを指摘した上で、IARCは本物質のヒトにおける発がん性の証拠は不十分とした (IARC 73 (1999))。 一方、実験動物ではマウスを用いた経口経路による3試験、及びマウスの吸入経路による1試験において、腎尿細管腫瘍が認められ、1試験では肝細胞の腫瘍も認められたこと、またラットを用いた経口経路での3試験で、腎尿細管腫瘍が認められたことを挙げて、実験動物では発がん性の十分な証拠があるとして、IARCは1999年に「グループ2B」に分類した (IARC 73 (1999))。他の国際機関による本物質の発がん性分類としては、ACGIHが「A3」に (ACGIH (7th, 2001))、日本産業衛生学会が「2B」に (許容濃度の勧告 (2015))、EUが「Carc. 2」に (EU-RAR (2007))、EPAが1998年分類で”細胞毒性と再生性の過形成を生じるような高ばく露状況下では「 L (Likely to be carcinogenic to humans) 」、それ以外では「NL (Not likely to be carcinogenic to humans) 」” (IRIS Summary (Access on August 2015)) に、NTPが「R」 (NTP RoC (13th, 2014)) に、それぞれ分類されている。 以上、IARCを含む国際的な既存分類結果はほぼ合致しており、よって本項は区分2とした。

生殖毒性

ヒトでは、本物質職業ばく露と自然流産のリスクの増加との相関性が報告されたが、他の溶媒への同時ばく露を伴う状況であったと記載されている (IRIS Tox Review (2001))。また、飲料水を介した本物質への経口ばく露により、本物質濃度と胎児の子宮内成長阻害との間に相関性がみられたとの報告があるが、塩素消毒により生成したトリハロメタンによる影響の可能性が指摘されている (IRIS Tox Review (2001)) など、本物質ばく露に特異的なヒト生殖能への有害影響について確実な情報はない。 実験動物では、マウスを用いた経口経路 (飲水) による多世代繁殖試験において、高用量群のF1、F2世代の動物では、体重増加抑制、生存率の低下とともに、繁殖指標 (妊娠率低下、同腹児数の減少、出産率の低下) の有意な低下がみられた (DFGOT vol. 14 (2000)、NITE有害性評価書 (2008)) との記述がある。一方、発生毒性影響に関しては、妊娠ラットの器官形成期 (妊娠6~15日) に吸入ばく露した発生毒性試験において、ラットでは母動物毒性が発現する用量 (30、95 ppm) で、胎児には胎児重量、及び頭尾長の低値、骨格変異 (骨化遅延、波状肋骨)、皮下の浮腫とともに、奇形 (無尾、鎖肛、肋骨欠損) の頻度増加が認められた (DFGOT vol. 14 (2000)、CICAD 58 (2004)、NITE有害性評価書 (2008))。また、妊娠マウスの器官形成期 (妊娠8~15日) に100 ppmを吸入ばく露 (一濃度のみでばく露時期を可変させた) した試験でも、母動物に体重増加抑制、軽微な妊娠率低下が、胎児に胎児毒性 (胎児重量及び頭尾長の低値、骨化遅延) とともに、奇形として口蓋裂の頻度増加がみられた (DFGOT vol. 14 (2000)、NITE有害性評価書 (2008)) との記述がある。なお、妊娠ラット、又は妊娠ウサギを用いた器官形成期強制経口投与による発生毒性試験では、母動物に一般毒性影響が発現する用量でも、胎児毒性は軽微 (胎児重量の低値、又は骨化遅延のみ)、ないしは無影響であったと報告されている (DFGOT vol. 14 (2000)、CICAD 58 (2004)、NITE有害性評価書 (2008))。 以上、吸入経路では実験動物で母動物毒性が発現する用量で、奇形を含む発生毒性影響が認められていることから、本項は区分2とした。

特定標的臓器毒性 (単回ばく露)

本物質は気道刺激性がある (EU-RAR (2007))。ヒト、実験動物ともに多数の急性毒性データがある。ヒトにおいては、麻酔薬として使用された経緯がある。吸入ばく露により、麻酔作用、咳、眩暈、嗜眠、感覚鈍麻、頭痛、吐き気、嘔吐、腹部痛、衰弱、意識喪失、昏睡、痙攣発作、呼吸速迫、呼吸中枢麻痺、意識障害、急性呼吸不全、不整脈、心血管系抑制作用、心室細動、黄疸、肝細胞変性・壊死、腎尿細管壊死、腎不全、経口摂取で腹痛、悪心、嘔吐、下痢、胃腸管刺激、呼吸中枢麻痺、痙攣発作、昏睡、乏尿症、アルブミン尿、腎障害、腎尿細管上皮の腫脹、硝子及び脂肪変性、肝障害、肝細胞壊死の報告がある (NITE有害性評価書 (2008)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、環境省リスク評価第2巻 (2003)、PATTY (6th, 2012)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、EU-RAR (2007)、CICAD 58 (2004)、ATSDR (1997)、ACGIH (7th, 2001)、IPCS, PIM 121 (1993))。 実験動物では、ラット、マウスの経口投与 (区分1相当) で、協調運動失調、鎮静、麻酔作用、肝臓の小葉中心性脂肪浸潤及び壊死、小葉中心性肝細胞壊死、腎皮質の近位尿細管上皮細胞の再生性増殖、腎臓の細胞増殖、腎臓に重度の壊死の報告、ラット、マウスの吸入ばく露 (区分1相当) で、麻酔作用、肝臓の脂肪浸潤、肝細胞壊死、腎近位・遠位尿細管の壊死、腎皮質の石灰化の報告、ウサギの経皮適用 (区分1相当) で、腎尿細管変性がみられている (NITE有害性評価書 (2008)、DFGOT vol. 14 (2000)、IARC 73 (1999)、産衛学会許容濃度の提案理由書 (2005)、EU-RAR (2007)、CICAD 58 (2004)、DFGOT vol. 14 (2000)、ATSDR (1997)、ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、CEPA (2001))。 以上より、本物質は気道刺激性、麻酔作用のほか、呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓に影響を与えることから、区分1 (呼吸器、心血管系、肝臓、腎臓)、区分3 (麻酔作用) とした。

特定標的臓器毒性 (反復ばく露)

ヒトでは約1,950 mg/m3の濃度のクロロホルムに最大6ヶ月間ばく露された作業者13人中全員が黄疸を呈し、うち5人から 1~2.9 mg/Lの血中クロロホルムが検出された (DFGOT vol. 14 (2000)) との記述、他の工場で 80~160 mg/m3の濃度のクロロホルムに4ヶ月以上ばく露された作業者18人に黄疸が観察された (DFGOT vol. 14 (2000)) との記述、また、14~400 ppm (68~1,950 mg/m3) のクロロホルムに1~6ヶ月間ばく露された作業者では、肝炎の進展、黄疸、悪心、嘔吐などの症状がみられ、肝炎の発症は 2~205 ppm (9.7~1,000 mg/m3) のばく露濃度でも生じた (PATTY (6th, 2012)) との記述、さらに製剤工場で 10~1,000 mg/m3のクロロホルムに 1~4年間ばく露された作業者68人中17人が肝腫大と診断され、うち3人で肝炎、14人で脂肪肝、10人で脾腫がみられた (環境省リスク評価第2巻 (2003)) との記述がある。 実験動物では、マウスに13週間強制経口、又は飲水投与した試験、ラットに3週間強制経口投与した試験で、区分2相当用量 (ガイダンス値換算: 14.8~60 mg/kg/day) で肝臓 (肝細胞の腫大、変性、脂肪化、初期肝硬変様変化など)、腎臓 (慢性炎症、近位尿細管の変性、壊死など)、脾臓 (白脾髄の萎縮、抗体産生細胞数の減少) への影響がみられ、またイヌに7.5年間カプセルを介して強制経口投与した試験でも、15 mg/kg/day (ガイダンス値換算: 12.9 mg/kg/day) で、肝臓の脂肪化に加え、血清ALT値の上昇がみられている (NITE有害性評価書 (2008)、環境省リスク評価第2巻 (2003))。さらに、吸入経路では、ラット及びマウスに13週間、又は2年間吸入ばく露 (蒸気と推定) した複数の試験で、区分1該当濃度 (ガイダンス値換算: 0.01~0.106 mg/L/6 hr/day) から、肝臓、腎臓に上記と同様の組織変化が認められた他、鼻腔への影響 (骨肥厚、嗅上皮の萎縮、化生、嗅上皮及び呼吸上皮の好酸性化) もみられている (NITE有害性評価書 (2008)、産衛学会許容濃度の提案理由 (2005))。 以上、ヒトでの知見より中枢神経系 (悪心、嘔吐) 及び肝臓を、実験動物での知見より呼吸器、肝臓、腎臓を標的臓器と考え、区分1 (中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓) とした。なお、脾臓についてはヒトでの知見も少なく、肝硬変など重篤な肝毒性による二次的影響の可能性を否定できないため、標的臓器からは除外した。

誤えん有害性*

データ不足のため分類できない。

* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
流水式試験 LC50 - Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 18.2 mg/l - 96 h
備考: (ECHA)
ミジンコ等の水生無脊
止水式試験EC50- Daphnia magna (オオミジンコ) - 79 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
備考: (ECHA)
藻類に対する毒性
止水式試験 ErC50 - Chlamydomonas reinhardtii (緑藻) - 13.3 mg/l - 72 h
備考: (ECHA)

12.2 残留性・分解性

データなし
理論上の酸素要求 (量)
備考: データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1888    IMDG (海上規制): 1888    IATA-DGR (航空規制): 1888

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): CHLOROFORM
IMDG (海上規制): CHLOROFORM
IATA-DGR (航空規制): Chloroform

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 6.1    IMDG (海上規制): 6.1    IATA-DGR (航空規制): 6.1

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

多様なプラスチック, ゴム強酸化剤

15. 適用法令

労働安全衛生法

特定化学物質第2類物質、特別有機溶剤等(特定化学物質障害予防規則第2条第1項第2号、第3の2号、第3の3号) 名称等を表示すべき危険物及び有害物(法第57条第1項、施行令第18条第1号、第2号別表第9) 名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2第1号、第2号別表第9) 危険性又は有害性等を調査すべき物(法第57条の3) 健康障害防止指針公表物質(法第28条第3項) 作業環境評価基準(法第65条の2第1項)

化審法

優先評価化学物質(法第2条第5項)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

毒物及び劇物取締法

劇物(法第2条別表第2)

消防法

貯蔵等の届出を要する物質(法第9条の3・危険物令第1条の10六別表2-18・平元省令2号第2条)【クロロホルム】

大気汚染防止法

有害大気汚染物質、優先取組物質(中央環境審議会第9次答申)

水質汚濁防止法

指定物質(法第2条第4項、施行令第3条の3)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

船舶安全法

毒物類(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

毒物類(施行規則第194条危険物告示別表第1)

道路法

車両の通行の制限(施行令第19条の13、(独)日本高速道路保有・債務返済機構公示第12号・別表第2)

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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