急性毒性
経口
ラットLD50値=0.7 g/kg (EHC 65 (1987))、790 mg/kg (環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2005))、2.1 g/kg (EHC 65 (1987))、2,510 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、SIDS (2005))、2,290 mg/kg (SIDS (2005))、2,680 mg/kg (SIDS (2005))、2,700 mg/kg (環境省リスク評価第4巻 (2005))、4,360 mg/kg (ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2005)) が報告されている。2件が区分4、6件がJIS分類基準の区分外 (国連分類基準の区分5) に該当することから、該当数の多いJIS分類基準の区分外 (国連分類基準の区分5) とした。今回の調査で入手したSIDS (2005)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第4巻 (2005) の情報を追加し、分類ガイダンスに基づき、該当数の多い区分とした。
経皮
ウサギLD50値=3,400 mg/kg (環境省リスク評価第4巻 (2005))、3,402 mg/kg (SIDS (2005))、4.2 g/kg (EHC 65 (1987)、PATTY (6th, 2012))、5,300 mg/kg (PATTY (6th, 2012)、EHC 65 (1987)、SIDS (2005)) はいずれも区分外に該当する。今回の調査で入手したSIDS (2005)、PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第4巻 (2005) の情報を追加し、分類ガイダンスに従い、区分5から区分外に変更した。
吸入:ガス
GHSの定義における液体である。
吸入:蒸気
データ不足のため分類できない。
吸入:粉じん及びミスト
ラットLC50値=8,000 ppm (換算値: 24.2 mg/L) (環境省リスク評価第4巻 (2005)) に基づき、区分外とした。試験濃度8,000 ppmは飽和蒸気圧濃度5,923 ppm (ICSC (2005)) より高い濃度であるため、「粉じん/ミスト」と判断し、mg/L を単位とする基準値を適用した。なお、今回の調査で入手した環境省リスク評価第4巻 (2005) データをもとに、ミストの基準値を用いて分類した。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
SIDS (2005)、EHC 65 (1987)、PATTY (6th, 2012) 及び DFGOT vol.19 (2003) のウサギを用いた24時間パッチテストで、「中等度の刺激性」が認められたとの記述がある。ACGIH (7th, 2001)、PATTY (6th, 2012) には、職業ばく露で「皮膚炎」が認められるとの記述がある。さらに、本物質は、EU DSD分類において「Xi; R37/38-41」、EU CLP分類において「Skin Irrit. 2 H315」に分類されている。以上の情報に基づき区分2とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
ウサギを用いた試験では、中等度~強度の刺激性が認められ、7日以内に回復しないが、21日以内に完全に回復した。Modified Maximum Average Score (MMAS) は 60.8 であった (ECETOC TR 48 (1998))。環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2005)、EHC 65 (1987)、ACGIH (7th, 2002)、DFGOT vol.19 (2003)、PATTY (6th, 2012)、産衛学会 許容濃度の提案理由書 (1987) には「ヒトで職業ばく露 (蒸気ばく露) でも角結膜炎など眼刺激性が認められた」との記述がある。さらに、本物質は、EU DSD分類において「Xi; R37/38-41」、EU CLP分類において「Eye Dam. 1 H318」に分類されている。以上の情報に基づき区分2Aとした。
呼吸器感作性
呼吸器感作性: データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
皮膚感作性: データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
分類ガイダンスの改訂により、「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、In vivoでは、マウスの赤血球を用いる小核試験で陰性と報告されている (SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001))。さらにin vitroでは、細菌を用いる復帰突然変異試験 (SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001)、NTP DB (Access on June 2013)、EHC 65 (1987))、哺乳類培養細胞を用いるマウスリンフォーマ試験 (EHC 65 (1987))、染色体異常試験 (EHC 65 (1987))、小核試験 (SIDS (2005)) で陰性である。
発がん性
IRIS (1991) でDに分類されていることから、分類できないとした。分類ガイダンスの改訂により区分を変更した。
生殖毒性
妊娠ラットの吸入ばく露試験で、母動物に顕著な毒性 (死亡(2/18例)、体重増加抑制) が発現する用量で胎児に軽微な骨格奇形 (頸肋痕跡) がみられたのみ (環境省リスク評価第4巻 (2005)、SIDS (2005)、ACGIH (7th, 2001)) であった。しかし、雌雄の性機能、生殖能に対する影響に関する情報がなく、分類ガイダンスに従い、「分類できない」とした。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
PATTY (6th, 2012)、環境省リスク評価第4巻 (2005) にヒトでの吸入ばく露で咽頭に軽度の刺激がみられたとの記述から、気道刺激性と考えられ、区分3とした。また、EHC 65 (1987)、ACGIH (7th, 2001)、DFGOT vol. 19 (2003)、PATTY (6th, 2012) でラット及びマウスでの吸入経路により、麻酔作用、中枢神経抑制が生じたとの記述、並びに環境省リスク評価第4巻 (2005)、PATTY (6th, 2012) にヒトでの吸入ばく露により頭痛を生じたとの記述から、麻酔作用と考えられ、区分3とした。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
産衛学会許容濃度の提案理由書 (1987)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、ACGIH (7th, 2001) のヒトの職業ばく露例にめまいや頭痛がみられたとの記述、並びに産衛学会許容濃度の提案理由書 (1987)、環境省リスク評価第4巻 (2005)、PATTY (6th, 2012) のヒト職業ばく露例で聴力損失が認められたとの記述から、中枢神経系及び聴覚器が吸入経路での標的臓器とみなし、いずれも区分1とした。
吸引性呼吸器有害性
3以上13を超えない炭素原子で構成された一級のノルマルアルコール;13を越えない炭素原子で構成されたイソブチルアルコール及びケトンに相当するため、少なくとも国連GHS区分2に該当するが、JISでは区分2は採用していない。また、分類ガイダンスもこれにあわせて改定されている。区分1に該当するかどうかの情報はなく分類できないとした。