急性毒性
経口
ラットのLD50=1,100 mg/kg bw (EU-RAR (2004), DFGOT vol.18 (2002))、LD50=350 mg/kg bw (EPA Pesticides (1992)) より区分4とした。
経皮
データ不足のため分類できない。なお、旧分類の根拠であるIUCLIDの結果は「LDLo」であったため不採用とした。
吸入:ガス
GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
GHSの定義における固体である。
吸入:粉じん及びミスト
データ不足のため分類できない。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験で、背部皮膚に本物質0.5 mL (脱イオン水での1%懸濁液) を開放および閉塞適用した結果、いずれも全例 (4/4) に重度の刺激性がみられた。開放適用の試験では、表皮及び真皮浅層に、錯角化症、角化亢進、炎症性変化、濾胞上皮の棘細胞増生がみられ、閉塞適用の試験ではさらに、赤斑及び潰瘍もみられた (EU-RAR (2004))。EU-RAR (2004) には、「ECクライテリアでは、本物質は皮膚腐食性物質に分類されている」と記載されており、「この試験結果はガイドライン準拠によるものではないが、「classification and labeling (R34)」を正当化する」と結論している。本物質は、EU DSD分類において「R34」、EU CLP分類において「Skin Corr. 1B H314」に分類されている。以上の情報に基づき区分1とした。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
事故で眼に濃縮塩化亜鉛のばく露を受けたヒトの報告が2例ある (EU-RAR (2004))。浮腫に次いで永続的な角膜瘢痕化に至り、回復に6~28週を要したとの記述 (EU-RAR (2004))、「本物質は腐食性物質である」との記述に基づき区分1とした。
呼吸器感作性
呼吸器感作性:ヒトではんだ液による職業性喘息が報告されている (DFGOT vol.18 (2002)) が、塩化アンモニウムにもばく露されているので原因不明。よって、データ不足のため分類できないとした。
皮膚感作性
皮膚感作性:データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
ガイダンスの改訂により「区分外」が選択できなくなったため、「分類できない」とした。すなわち、塩化亜鉛について、マウスを用いたin vivo骨髄染色体異常試験で陽性知見が報告されているものの、より高用量を用いた硫酸亜鉛によるマウスあるいはラットの染色体異常試験、小核試験、優性致死試験では陰性であること、及び、亜鉛化合物の生物活性は亜鉛陽イオンによると考えられることから、証拠の重みづけに基づき、塩化亜鉛がin vivo 遺伝毒性物質とはみなされていない (EU-RAR (2004))。なお、in vitroでは、細菌を用いる復帰突然変異試験で陰性、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験で陰性、極めて高用量によるヒトリンパ球を用いた小核試験で陽性と報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2004)、EHC (2001))。なお、旧分類ではラットおよびマウスを用いた染色体異常試験 (体細胞in vivo変異原性試験) を陽性としているが、今回は EU-RAR (2004)、EHC (2001) で信頼性に疑問を呈しているため陽性と判断しなかった。
発がん性
米国EPAによりIに分類されている (IRIS (2005)) ことに基づき、分類できないとした。
生殖毒性
データ不足のため分類できない。なお、マウスを用いた生殖毒性試験において生殖毒性 (妊娠率、産児数、出生率の低下) が認められたが、雌親動物が10例中2~5例死亡し、肝臓及び脾臓重量の減少が見られる母動物毒性が顕著なため、(NITE 初期リスク評価書 (2008)) 分類の根拠としなかった。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
ヒトにおいて、塩化亜鉛のヒュームによる吸入ばく露で、一過性の気道刺激性症状から重度の呼吸器障害 (慢性病変) をきたすことが報告されている (NITE初期リスク評価書 (2008))。また、軍人が訓練中に塩化亜鉛に吸入ばく露され、重度の急性呼吸不全 (ARDS) をきたし死亡例が生じたとの報告 (PATTY (6th, 2012))、同じく吸入ばく露により、間質性肺線維症を生じ、呼吸不全により死亡した例など、致死的な呼吸器障害例も見られるとの記述から、区分1 (呼吸器) に分類した。旧分類で標的臓器とされた「肝」、「膵」についてはEHC 221 (2001) に該当する知見は確認できなかった。また、他の評価書 (EU-RAR (2004)、NITE初期リスク評価書 (2008) など) にもこのような記述がないため、標的臓器から削除した。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
データ不足のため分類できない。旧分類に用いたDFGOT vol.18 (2002) のマウスのデータは塩化亜鉛単体による吸入ばく露データではなく、ヘキサクロロエタン、硝酸カリウム、酸化亜鉛などを含む多種混合物での吸入ばく露データであり、分類根拠として採用するのは適切ではない。その他の評価書 (NITE初期リスク評価書 (2008)、EU-RAR (2004) ) にもZnCl2単体による信頼性のある反復ばく露のデータはない。
吸引性呼吸器有害性
データ不足のため分類できない。