急性毒性
経口
GHS分類: 区分4 ラットのLD50値として、396.9 mg/kg (雄) (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on May 2017))、500 mg/kg (ACGIH (7th, 2013))、1,200 mg/kg (SIAP (2012)) との報告に基づき、区分4とした。
経皮
GHS分類: 区分外 ウサギのLD50値として、3,300 mg/kg (PATTY (6th, 2012))、及びラットのLD50値として、> 5,000 mg/kg (SIAP (2012)) との報告に基づき、区分外とした。
吸入:ガス
GHS分類: 区分4 ラットの4時間LC50値として、> 5.9 mg/L (> 2,441 ppm) (SIAP (2012))、7,910 ppm (PATTY (6th, 2012))、1時間LC50値として、19.1 mg/L (7,900 ppm、4時間換算値: 3,950 ppm) (SIAP (2012)) の報告に基づき、区分4とした。
吸入:蒸気
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義におけるガスである。
吸入:粉じん及びミスト
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義におけるガスである。
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
GHS分類: 区分1A ヒトの皮膚に対して腐食性があるとの記載がある (ACGIH (7th, 2013)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。また、ヒトの皮膚に数分間接触させた後、石鹸と水で洗浄しても点状出血がみられ、皮膚の軟化が1~2時間続き、2~3時間後には落屑が観察される (ACGIH (7th, 2013)) との記載がある。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
GHS分類: 区分1 皮膚腐食性/刺激性が区分1Aに分類されている。また、事故によるヒトの眼へのばく露によって角膜上皮の侵食が生じたが4~5日で回復したとの報告 (ACGIH (7th, 2013)、環境省リスク評価第12巻 (2014)) や、動物の眼への適用試験で結膜の出血、角膜の浮腫と白濁が観察されたが一過性であったとの報告 (ACGIH (7th, 2013)) がある。
呼吸器感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖細胞変異原性
GHS分類: 分類できない In vivoでは、マウスの骨髄細胞を用いた小核試験で陰性 (環境省リスク評価第12巻 (2014)、食品安全委員会添加物評価書 (2010))、in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験で陰性、哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陽性である (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on May 2017)、環境省リスク評価第12巻 (2014)、ACGIH (7th, 2013)、PATTY (6th, 2012)、HSDB (Access on May 2017))。
発がん性
GHS分類: 分類できない データ不足のため分類できない。
生殖毒性
GHS分類: 分類できない ラットを用いた強制経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験 (OECD TG 422) において、親動物に死亡例 (雄2/13例、雌1/13例) が生じた 200 mg/kg/day まで生殖発生影響はみられなかった (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on May 2017)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。しかし、本試験はスクリーニング試験のため、この結果のみで区分外とはできない。その他、妊娠マウスに腹腔内投与した複数の発生毒性試験において、母動物毒性発現量、又はそれ以下の用量で胎児体重の低値、出生児の体重増加抑制など軽微な影響がみられたとの報告 (環境省リスク評価第12巻 (2014))、並びに in vitro 胎児培養試験で胎児に発育阻害がみられたとの報告 (環境省リスク評価第12巻 (2014)) があるが、いずれも投与経路、試験条件などから分類に用いるには不十分な試験と考えられた。
特定標的臓器毒性(単回ばく露)
GHS分類: 区分2 (中枢神経系、呼吸器) 本物質のヒトでの単回ばく露の情報はない。実験動物ではラットの単回経口投与試験で、区分2範囲の820~1,310 mg/kg投与群では歩行失調、流涙、流涎、自発運動の停止を生じて約24時間以内に死亡し、それ以下の投与群では呼吸異常音 (ラッセル音)、腹部の膨満がみられたとの報告がある (厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on May 2017))。また、ラット及びマウスの単回吸入試験において、主な症状は重度の不活発、血液様分泌物が乾燥した痂皮の形成を伴う鼻孔の腫脹、流涙、食欲減退、消耗、中枢神経系刺激、痙攣であり、致死量にばく露した動物の大半は数時間以内に死亡し、原因は中枢神経系の障害と考えられたとの報告がある (DFGOT (2014) (Access on May 2017))。症状がみられた用量の詳細な記載はないが、この試験においては、マウスの4時間LC50値は、4,200 ppmと報告されているため (DFGOT (2014) (Access on May 2017))、症状はLC50値付近の区分2範囲で認められたと考えられる。更に、本物質は感覚神経刺激性物質であり、マウスの吸入ばく露における感覚刺激のRD50値(平均呼吸数が半減する濃度)は61 ppmであるとの記述がある (ACGIH (7th, 2013))。以上の情報より、本物質は区分2相当の用量で中枢神経系と鼻腔に影響を示し、また気道刺激性を有すると考えられる。
特定標的臓器毒性(反復ばく露)
GHS分類: 区分1 (呼吸器) ヒトに関する情報はない。 実験動物については、ラットを用いた2週間吸入毒性試験 (蒸気、6時間/日、5日/週) で、区分1のガイダンス値の範囲内である75 ppm (90日換算値: 0.02 mg/L) 以上で鼻腔及び鼻甲介の刺激 (鼻粘膜の充血やうっ血、浮腫、空胞化や組織崩壊、上皮の剥離を伴う変性や壊死、萎縮、再生像又は扁平上皮化生等)、250 ppm (90日換算値: 0.07 mg/L) 以上で赤血球数の増加、区分2のガイダンス値の範囲である750 ppm (90日換算値: 0.20 mg/L) で体重増加抑制、ばく露時の音刺激に対する反応の低下、ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値・血小板・好中球の増加、尿素窒素・タンパク質・クレアチニンの増加の報告がある (ACGIH (7th, 2013)、環境省リスク評価第12巻 (2014))。なお、経口経路では、ラットを用いた反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験において、区分2のガイダンス値の範囲内である200 mg/kg/day (90日換算値: 93 mg/kg/day) で前胃の炎症性細胞浸潤を伴う扁平上皮化生、粘膜下組織の水腫、肉芽形成、前胃のびらん・潰瘍・出血等がみられたとの報告がある (環境省リスク評価第12巻 (2014)、厚労省既存化学物質毒性データベース (Access on May 2017))。 以上のうち、音刺激に対する反応性の低下は一過性と考えられること、経口経路についてはみられた影響は刺激性に起因した消化器系への影響と考えられることから分類根拠としなかった。
吸引性呼吸器有害性
GHS分類: 分類対象外 GHSの定義におけるガスである。