安全データシート

トルエン

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: トルエン
  • CB番号: CB4233905
  • CAS: 108-88-3
  • EINECS番号: 203-625-9
  • 同義語: トルエン,メチルベンゼン

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 染料、香料、火薬(TNT)、有機顔料、合成クレゾール、甘味料、漂白剤、TDI、テレフタル酸、合成繊維、可塑剤などの合成原料、ベンゼン原料、キシレン原料、石油精製、医薬品、塗料・インキ溶剤等
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日
平成24年。政府向けGHS分類ガイダンス(H22.7版)を使用
GHS改訂4版を使用
物理化学的危険性
引火性液体   区分2
健康に対する有害性
急性毒性(吸入:蒸気)   区分4
皮膚腐食性/刺激性   区分2
眼に対する重篤な損傷/眼刺激性   区分2B
生殖毒性   区分1A
特定標的臓器毒性(単回ばく露)   区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)
特定標的臓器毒性(反復ばく露)   区分1(中枢神経系、腎臓)
吸引性呼吸器有害性   区分1
環境に対する有害性
水生環境有害性 (急性)   区分2
オゾン層への有害性   分類実施中
<環境分類実施日に関する情報>
水生環境有害性 (急性):H18.2.10、H24年度の分類は実施中のため、H18年度の分類を記載(GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用)。 水生環境有害性 (長期間):H18.2.10、H24年度の分類は実施中のため、H18年度の分類を記載(GHS分類マニュアル(H18.2.10 版)を使用)。

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS02GHS07GHS08
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H225 引火性の高い液体及び蒸気。
H304 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ
H315 皮膚刺激。
H336 眠気又はめまいのおそれ。
H361 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い。
H373 長期にわたる,又は反復ばく露により臓器 (中枢神経系) の障害のおそれ
H401 水生生物に毒性。
H412 長期継続的影響によって水生生物に有害。
注意書き
安全対策
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P210 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。禁煙。
P233 容器を密閉しておくこと。
P240 容器を接地すること/アースをとること。
P241 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/機器を使用すること。
P242 火花を発生させない工具を使用すること。
P243 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P261 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P271 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P280 保護手袋/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
P301 + P310 + P331 飲み込んだ場合:直ちに医師 に連絡すること。 無理に吐かせないこと。
P303 + P361 + P353 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P304 + P340 + P312 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し,呼吸しやすい姿勢で休息させること。 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P308 + P313 ばく露又はばく露の懸念が ある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P332 + P313 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
保管
P403 + P233 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P403 + P235 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 残余内容物・容器等は産業廃棄物として適正に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 分子量: 92.14 g/mol
  • CAS番号: 108-88-3
  • EC番号: 203-625-9
  • 化審法官報公示番号: 3-2
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 医師に相談する。
眼に入った場合
予防措置として、水で眼を洗浄する。
飲み込んだ場合
無理に吐かせないこと。 意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

使ってはならない消火剤
ウォータージェットは使用しない。
消火剤
粉末 乾燥砂

5.2 特有の危険有害性

炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

未開封の容器を冷却するために水を噴霧する。

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

保護具を使用する。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 付近の発火源となるものを取り除く。 安全な場所に避難する。 蒸気がたまると爆発性濃縮物が生成されるので要注意。蒸気は低いところにたまる可能性あり。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

漏出物を閉じ込め、不可燃性の吸収剤 (砂、土、珪藻土、バーミキュライト等) を使用して集め、地域/国の規則に従い廃棄するために容器に入れる (項目 13 を参照)。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

皮膚や眼への接触を避けること。 蒸気や噴霧の吸い込みを避けること。発火源から離しておいてください-禁煙。静電気の蓄積を防止する手段を講じる。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。 一度開けた容器は注意深く再度密封し、漏れを避けるためまっすぐ立てておく。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
ACL: 20 ppm - 作業環境評価基準、健康障害防止指
TWA: 20 ppm - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
十分な衛生的作業を行い安全規定に従って取扱う。 休憩前や終業時には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: フッ素ゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
飛沫への接触
材質: フッ素ゴム
最小厚: 0.7 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Vitoject? (KCL 890 / Aldrich Z677698, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 難燃静電気保護服。, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、
保護装置のタイプを選択しなければならない。
呼吸用保護具
リスクアセスメントによりろ過式呼吸用保護具が適切であると示されている場所では、工学的
制御のバックアップとして、多目的直結式(US)またはABEK型(EN14387)呼吸用保護具カ
ートリッジ付き全面形呼吸用保護具を使用する。呼吸用保護具が唯一の保護手段である場合、
全面形送気マスクを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格
で試験され、認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
液体(Merck (14th, 2006))
無色(Ullmanns(E) (6th, 2003))
臭い
ベンゼン臭(Merck (14th, 2006))
臭いのしきい(閾)値
40ppm(Ullmanns(E) (6th, 2003))
pH
データなし。

融点・凝固点

-95℃(Merck (14th, 2006))

沸点、初留点及び沸騰範囲

110.6℃(Merck (14th, 2006))

引火点

4.4℃(CC)(Merck (14th, 2006))

蒸発速度

2.0 (酢酸ブチル =1) 6.1 (ジエチルエーテル=1)(Ullmanns(E) (6th, 2003))

燃焼性(固体、気体)

データなし。

燃焼又は爆発範囲

下限:1.27% 、上限:7%(IMDG (2010))

蒸気圧

28.4 mmHg(25℃)(HSDB (2010))

蒸気密度

3.1 (Air=1)(HSDB (2010))

比重(相対密度)

0.866(20℃/4℃)(Merck (14th, 2006))

溶解度

水:526mg/L(25℃, EXP)(Howard (1997))
ほとんどの有機溶剤(例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、フェノール類、エステル類および塩化炭化水素類)に完全混和。(Ullmanns(E) (6th, 2003))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow= 2.73(HSDB (2010))

自然発火温度

896F (480 ℃)(HSDB (2010))

分解温度

データなし。

粘度(粘性率)

0.560(25℃)、 0.424(50℃)mPa・s(CRC (91st, 2010))

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

熱、炎、火花。

10.5 混触危険物質

強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

有害な分解生成物が火があるとき生成される。 - 炭素酸化物
その他の分解生成物 - データなし
火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
ラットLD50値として、7件のデータ [5000 mg/kg(環境省リスク評価 第1巻 (2002))、5580 mg/kg(EU-RAR (2003))、5900 mg/kg、6.4g/kg、7.53g/kg(以上3件 EHC 52 (1985))、7.0g/kg(JECFA 518 (1981))、7300mg/kg (ATSDR (2000))]は全て区分外に該当する。なお、若齢動物のデータは分類に採用しなかった。GHS分類:区分外
経皮
ラットのLD50値は12000 mg/kg(ACGIH (2007))、ウサギのLD50値は14100 mg/kg(ACGIH (2007))または12400 mg/kg(EU-RAR (2003))と報告され、いずれも区分外に該当する。 GHS分類:区分外
吸入:ガス
吸入 (ガス):GHSの定義における液体である。GHS分類:分類対象外
吸入:蒸気
吸入 (蒸気):ラットの4時間ばく露によるLC50値として、6件のデータ[7460 ppm、3319-7646 ppm、8762 ppm(以上3件 EU-RAR (2003))、4000 ppm、8000 ppm、8800 ppm(以上3件 PATTY (5th, 2001)]はいずれも区分4に該当する。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度(37368 ppm)の90%より低いため、ミストがほとんど混在しない蒸気として気体の基準値を適用した。 GHS分類:区分4
吸入:粉じん及びミスト
吸入 (粉塵・ミスト):データなし。GHS分類:分類できない

皮膚腐食性及び刺激性

ウサギ7匹に試験物質0.5 mLを4時間の半閉塞適用した試験(Annex V, method B2)において、適用後72時間までに全動物が軽微~重度の紅斑、軽度の浮腫を示し、7日目には全動物に明瞭~重度の紅斑、5匹に軽微~軽度の浮腫が観察され、中等度の刺激性(moderately irritating)と評価された結果(EU-RAR (2003))に基づき、区分2とした。なお、ウサギ6匹を用いた別の皮膚刺激性試験(OECD TG 404)では、データの詳細が不明であるが軽度の刺激性(slightly irritating)との報告(EU-RAR (2003))、また、モルモットに本物質原液0.5 mLを24時間の閉塞適用した試験では、痂皮形成がみられ、5日後に皮膚の厚い鱗屑層と皮膚表面に軽度の裂け目が観察されたとの報告(EU-RAR (2003))もある。 GHS分類:区分2

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

ウサギ6匹に試験物質0.1 mLを適用した試験(OECD TG 405、GLP)において、適用1時間後に結膜の発赤、浮腫、排出物が全動物で観察され、24、48時間後も症状は持続したが、その後減弱し72時間後には発赤のみ、7日目には全て消失し、軽度の刺激性(slight eye irritation)と結論されている(EU-RAR (2003))ことから、区分2Bとした。なお、ウサギを用いた別の眼刺激性試験(OECD TG 405)では、刺激性の総合評点MMAS(AOIに相当)は9(最大値110に対し)(ECETOC TR 48(2) (1998))との報告もあり、このスコアは区分外に相当する。また、ヒトへの影響として、誤って本物質を眼にかけられた労働者が、結膜の刺激性や角膜の損傷などの眼上皮に一過性の障害を示したが、48時間以内に完全に回復した(EHC 52 (1985))との報告がある。GHS分類:区分2B

呼吸器感作性

データなし。GHS分類:分類できない

皮膚感作性

モルモットのマキシマイゼーション試験(EU guideline B6、GLP)において、50%溶液による惹起処置に対し、20匹中1匹に反応が認められたのみで陽性率は5%(1/20)の結果から、この試験で本物質は皮膚感作性物質ではないと結論付けられた(EU-RAR (2003))こと、さらに、ヒトにおいて、トルエンは皮膚感作性物質ではない(PATTY (5th, 2001))との記載もあることから、区分外とした。 GHS分類:区分外

生殖細胞変異原性

マウスに経口または吸入投与した優性致死試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)において2件の陰性結果(NITE初期リスク評価書 .87 (2006))、マウスまたはラットに経口、吸入または腹腔内投与した骨髄細胞を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)において5件の陰性結果(NITE初期リスク評価書 .87 (2006)、EHC 52 (1985)、EU-RAR (2003))、マウスに経口または腹腔内投与した骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)において2件の陰性結果(NITE初期リスク評価書 87 (2006)、NTP DB (Access on Apr. 2012))、がそれぞれ報告されている。以上より区分外とした。なお、ラットに皮下投与した骨髄細胞を用いた染色体異常試験で陽性結果の報告があるが、、トルエンの純度、および異常の判断基準が明確でないため評価困難である(NITE初期リスク評価書 87 (2006))と記載されていることから、採用しなかった。さらにin vivo試験では、遺伝毒性試験としてマウスまたはラットに腹腔内または吸入投与した姉妹染色分体交換試験で陰性(NITE初期リスク評価書 87 (2006))または陽性(EHC 52 (1985))の結果、一方、in vitro試験ではエームス試験で陰性(NITE初期リスク評価書 .87 (2006)、NTP DB (1979))、マウスリンフォーマ試験で陽性(NITE初期リスク評価書 87 (2006))、染色体異常試験および小核試験では陰性または陽性の結果(NITE初期リスク評価書 87 (2006)、NTP DB (Access on Apr. 2012))が報告されている。 GHS分類:区分外

発がん性

IARCの発がん性評価でグループ3(IARC 71(1999))、ACGIHでA4(ACGIH (2007))、U.S.EPAでグループD(IRIS (2007))に分類されていることから、「分類できない」とした。なお、ラットおよびマウスに103週間吸入ばく露(6.5 hours/day、ラット 0, 600, or 1200 ppm、マウス0, 120, 600, or 1200 ppm)した発がん性試験では、両動物種とも雌雄で発がん性の証拠は認められなかった(NTP TR 371 (1990))と報告されている。 GHS分類:分類できない

生殖毒性

ヒトにおいて、トルエンを高濃度または長期吸引した妊婦に早産、児に小頭、耳介低位、小鼻、小顎、眼瞼裂など胎児性アルコール症候群類似の顔貌、成長阻害や多動など(NITE初期リスク評価書 87 (2006)、IARC 71 (1999))報告され、また、1982~1982年にカナダで300例の奇形について行われた疫学調査の結果、芳香族溶媒、特にトルエンの職業ばく露歴を持つ女性の間では先天奇形増加のリスクが高かった(ACGIH (2007))ことが報告されている。さらに、溶媒のばく露を一定期間モニターされていた女性のコホートで自然流産の調査(ケース・コントロール研究)が行われ、少なくとも週3回トルエンにばく露された女性の間で自然流産のオッズ比が増加し、トルエンばく露の危険性がを示された(IARC 71 (1999))。以上のヒトでのばく露知見に基づき、区分1Aとした。また、「トルエンは容易に胎盤を通過し、また母乳に分泌される」(SIDS(J) (Access on Apr. 2012))との記載により、「追加区分:授乳に対する又は授乳を介した影響」とした。なお、動物試験では、ラットに交配前から妊娠期間にかけての期間、または妊娠期間中の吸入ばく露により胎仔死亡の胚・胎仔死亡の増加、自然分娩した場合には生存出生仔数の有意な減少が認められている(EU-RAR (2003)、NITE初期リスク評価書 87 (2006))が、催奇形性は報告されていない。 GHS分類:区分1A、追加区分:授乳に対する又は授乳を介した影響

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

ヒトで750 mg/m3を8時間の吸入ばく露で筋脱力、錯乱、協調障害、散瞳、3000 ppmでは重度の疲労、著しい嘔気、精神錯乱など、さらに重度の事故によるばく露では昏睡に至っている(IARC 47 (1989))。また、本物質を含むシンナーを誤って経口摂取し死亡した15件の事例報告があり、大量のトルエンを摂取し30分後に死亡した51歳男性の場合、死因はおそらく重度の中枢神経系抑制であった(IRIS tox. Review (2005))と報告されている。本物質を含む塗料シンナーを約1クォート摂取した46歳男性の事例では、重度の腹痛、下痢、胃出血と共に重度の中枢神経系の抑制を示したが、36時間の維持療法後に回復を示した(IRIS tox. Review (2005))。以上の外にも本物質の中枢神経系に対する影響は多数報告され、区分1(中枢神経系)とした。一方、ヒトで本物質は高濃度の急性ばく露で容易に麻酔作用を起こし、本物質蒸気により意識を喪失した労働者の事例が多いことは周知である(EHC 52 (1985))ことに加え、動物試験ではマウスまたはラットに吸入ばく露後に麻酔作用が報告されている(IARC 47 (1989))ことから、区分3(麻酔作用)とした。さらに、低濃度(200 ppm)のばく露されたボランティアが一過性の軽度の上気道刺激を示した(PATTY (5th, 2001))との報告により、区分3(気道刺激性)とした。 GHS分類:区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

トルエンに平均29年間曝露されていた印刷労働者30名と対照者72名の疫学調査研究で、疲労、記憶力障害、集中困難、情緒不安定、その他に神経衰弱性症状が対照群に比して印刷労働者に有意に多く、神経心理学的テストでも印刷労働者の方が有意に成績が劣った。また、トルエン嗜癖者に運動失調、共同運動障害、手足の振せん、大脳のびまん性萎縮が認められ、MRI検査では大脳、小脳、脳幹部のびまん性萎縮、中枢神経系全般の灰白質と白質の差異の不鮮明化等が認められた(産業医学 36巻 (1994))。特に高濃度曝露で中枢神経系の機能障害と同時に脳の萎縮、脳の白質の変化などの形態学的変化も生じることが報告されている(産業医学 36巻 (1994))。その他にも本物質ばく露による中枢神経系障害の発生は数多くの報告があり、区分1(中枢神経系)とした。一方、嗜癖でトルエンを含有した溶剤を吸入していた19歳男性で、悪心嘔吐が続き入院し、腎生検で間質性腎炎が認められ腎障害を示した症例(産業医学 36巻 (1994))、トルエンの入った溶剤を飲んでいた26歳の男性で、急性腎不全を来たし、トルエンの腎毒性とみなされた症例(産業医学 36巻 (1994))、さらに、嗜癖でトルエンを吸入し四肢麻痺で入院した17歳女性が尿細管性アシドーシスと診断され、四肢麻痔はトルエン中毒による腎尿細管障害の結果生じたものとされた症例(産業医学 36巻 (1994))など、多くの事例報告がある。以上より、区分1(腎臓)とした。なお、動物試験では、ラット、マウスに経口または吸入による反復投与試験において、ガイダンス値範囲内に相当する用量で悪影響の所見は報告されていない(NITE初期リスク評価書 87 (2006)、EU-RAR (2003)、EHC 52(1985))。また、ヒトで、トルエンのばく露で肝障害の指標である肝酵素の上昇がみられたとする報告は1件あるが、逆にみられなかったとする報告もあり(EU-RAR (2003))、動物では、ラットおよびマウスによる経口および吸入による反復試験で、共にガイダンス値範囲内で肝臓への悪影響は報告されていないことから肝臓は分類の根拠にしなかった。 GHS分類:区分1(中枢神経系、腎臓)

吸引性呼吸器有害性

炭化水素であり、動粘性率は0.86 mm2/s(40℃)(計算値:粘度0.727mPa・s(Renzo(1986))、密度0.8483g/mL(CRC (91st, 2010))として計算)である。よって区分1とした。また、ヒトで、吸引性の液体トルエンが肺組織と直接接触すると、重度の刺激、即ち「化学肺炎」を引き起こすとの記載(DFGMAK-Doc.7 (1996))もある。GHS分類:区分1

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
流水式試験 LC50 - Oncorhynchus kisutch(ギンザケ) - 5.5 mg/l - 96 h
備考: (ECHA)
ミジンコ等の水生無脊
EC50 - Ceriodaphnia dubia (ミジンコ) - 3.78 mg/l - 48 h
椎動物に対する毒性
(US-EPA)
微生物毒性
止水式試験 EC50 - バクテリア - 84 mg/l - 24 h
備考: (ECHA)

12.2 残留性・分解性

生分解性
好気性 - 曝露時間 20 d
結果: 86 % - 易分解性。
備考: (IUCLID)
理論上の酸素要求
3,130 mg/g
(量)
備考: (Lit.)

12.3 生体蓄積性

生体蓄積性 Leuciscus idus (コイの一種) - 3 d
- 0.05 mg/l(トルエン)
生物濃縮因子(BCF): 90

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。 アフターバーナーとスクラバーが備えられた化学焼却炉で焼却するが、この物質は引火性が高いので点火には特に注意をはらう。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 1294    IMDG (海上規制): 1294    IATA-DGR (航空規制): 1294

14.2 国連輸送名

ADR/RID (陸上規制): TOLUENE
IMDG (海上規制): TOLUENE
IATA-DGR (航空規制): Toluene

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 3    IMDG (海上規制): 3    IATA-DGR (航空規制): 3

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): II IMDG (海上規制): II IATA-DGR (航空規制): II

14.5 環境危険有害性

ADR/RID: 非該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 非該当
非該当

14.6 特別の安全対策

なし

14.7 混触危険物質

強酸化剤

15. 適用法令

労働基準法

疾病化学物質

労働安全衛生法

第2種有機溶剤等
危険物・引火性の物
名称等を表示すべき危険有害物(法第57条、施行令第18条別表第9) 名称等を通知すべき危険有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9) リスクアセスメントを実施すべき危険有害物(法第57条の3)
作業環境評価基準

毒物及び劇物取締法

劇物
幻覚又は麻酔の作用を有する物

じん肺法

第1種指定化学物質

化審法

優先評価化学物質

消防法

第4類引火性液体、第一石油類非水溶性液体

船舶安全法

引火性液体類

航空法

引火性液体

海洋汚染防止法

危険物
有害液体物質(Y類物質)

麻薬及び向精神薬取締法

麻薬向精神薬原料

16. その他の情報

略語と頭字語

ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
EC50: 有効濃度 50%
IATA:国際航空運送協会
IMDG: 国際海上危険物
LC50: 致死濃度 50%
LD50: 致死量 50%
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
STEL: 短期暴露限度
TWA: 時間加重平均

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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