安全データシート

テトラエチルチウラムジスルフィド

改訂日:2024-01-24版番号:1

1. 化学品及び会社情報

製品識別子

  • 製品名: テトラエチルチウラムジスルフィド
  • CB番号: CB0476519
  • CAS: 97-77-8
  • EINECS番号: 202-607-8
  • 同義語: ジスルフィラム,テトラエチルチウラムジスルフィド

物質または混合物の関連する特定された用途、および推奨されない用途

  • 関連する特定用途: 有機ゴム薬品(加硫促進剤)
  • 推奨されない用途: なし

会社ID

  • 会社名:Chemicalbook
  • 住所:北京市海淀区上地十街匯煌国際1号棟
  • 電話:400-158-6606

2. 危険有害性の要約

GHS分類

分類実施日(物化危険性及び健康有害性)
GHS改訂4版を使用
H31.3.15、政府向けGHS分類ガイダンス (H25年度改訂版 (ver1.1):JIS Z7252:2014準拠) を使用
物理化学的危険性
-
健康に対する有害性
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)   区分1(神経系、心血管系、甲状腺、消化管、肝臓)
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)   区分1(神経系、腎臓)
生殖毒性   区分2
皮膚感作性   区分1
分類実施日(環境有害性)
環境に対する有害性はH18年度、GHS分類マニュアル(H18.2.10版)を使用
環境に対する有害性
水生環境有害性(長期間)   区分1
水生環境有害性(急性)   区分1

2.2 注意書きも含むGHSラベル要素

絵表示
GHS07GHS08GHS09
注意喚起語
危険
危険有害性情報
H410 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。
H373 長期にわたる、又は反復ばく露により臓器 (全身毒性) の障害のおそれ。
H372 長期にわたる、又は反復暴露による臓器 (肝臓, 神経系, 甲状腺, 内分泌系) の障害。
H370 臓器 (神経系) の障害。
H361 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い。
H320 眼刺激。
H317 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ。
H302 飲み込むと有害。
注意書き
安全対策
P280 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P273 環境への放出を避けること。
P272 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P270 この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P264 取扱い後は皮膚をよく洗うこと。
P260 粉じんを吸入しないこと。
P202 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P201 使用前に取扱説明書を入手すること。
応急措置
P391 漏出物を回収すること。
P337 + P313 眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
P333 + P313 皮膚刺激又は発しん(疹)が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P308 + P311 ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
P305 + P351 + P338 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P302 + P352 皮膚に付着した場合:多量の水で洗うこと。
P301 + P312 + P330 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。口をすすぐこと。
保管
P405 施錠して保管すること。
廃棄
P501 内容物/容器を承認された処理施設に廃棄すること。

2.3 他の危険有害性

なし

3. 組成及び成分情報

  • 化学物質・混合物の区別: 化学物質
  • 別名: Bis(diethylthiocarbamyl) disulfide
    Disulfiram
    Bis(diethylthiocarbamoyl) disulfide
  • 化学特性(示性式、構造式 等): C10H20N2S4
  • 分子量: 296.54 g/mol
  • CAS番号: 97-77-8
  • EC番号: 202-607-8
  • 化審法官報公示番号: 2-1820
  • 安衛法官報公示番号: -

4. 応急措置

4.1 必要な応急手当

一般的アドバイス
医師に相談する。 この安全データシートを担当医に見せる。
吸入した場合
吸い込んだ場合、新鮮な空気の場所に移す。 呼吸していない場合には、人工呼吸を施す。 医師に相談する。
皮膚に付着した場合
石けんと多量の水で洗い流す。 医師に相談する。
眼に入った場合
予防措置として、水で眼を洗浄する。
飲み込んだ場合
意識がない場合、口から絶対に何も与えないこと。 口を水ですすぐ。 医師に相談する。

4.2 急性症状及び遅発性症状の最も重要な徴候症状

もっとも重要な既知の徴候と症状は、ラベル表示(項目2.2を参照)および/または項目11に記載されている

4.3 緊急治療及び必要とされる特別処置の指示

データなし

5. 火災時の措置

5.1 消火剤

適切な消火剤
水噴霧、耐アルコール泡消火剤、粉末消火剤、二酸化炭素を使用すること。

5.2 特有の危険有害性

硫黄酸化物
窒素酸化物(NOx)
炭素酸化物

5.3 消防士へのアドバイス

消火活動時には必要に応じて 自給式呼吸装置を装着する。

5.4 詳細情報

データなし

6. 漏出時の措置

6.1 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置

保護具を使用する。 粉じんの発生を避ける。 蒸気、ミスト、またはガスの呼吸を避ける。 十分な換気を確保する。 安全な場所に避難する。 粉じんを吸い込まないよう留意。個人保護については項目 8 を参照する。

6.2 環境に対する注意事項

安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環境への放出は必ず避けなければならない。

6.3 封じ込め及び浄化の方法及び機材

粉じんを発生させないように留意して回収し、廃棄する。 掃いてシャベルですくいとる。 廃棄に備え適切な容器に入れて蓋をしておく。

6.4 参照すべき他の項目

廃棄はセクション13を参照。

7. 取扱い及び保管上の注意

7.1 安全な取扱いのための予防措置

安全取扱注意事項
皮膚や眼への接触を避けること。 粉じんやエアゾルを発生させない。
火災及び爆発の予防
粉じんが発生する場所では、換気を適切に行う。
衛生対策
十分な衛生的作業を行い安全規定に従って取扱う。 休憩前や終業時には手を洗う。注意事項は項目2.2を参照。

7.2 配合禁忌等を踏まえた保管条件

保管クラス
保管クラス (ドイツ) (TRGS 510): 11: 可燃性固体
保管条件
容器を密閉し、乾燥した換気の良い場所に保管する。

7.3 特定の最終用途

項目1.2に記載されている用途以外には、その他の特定の用途が定められていない

8. ばく露防止及び保護措置

8.1 管理濃度

コンポーネント別作業環境測定パラメータ
TWA: 2 mg/m3 - 米国。 ACGIH限界閾値(TLV)

8.2 曝露防止

適切な技術的管理
十分な衛生的作業を行い安全規定に従って取扱う。 休憩前や終業時には手を洗う。
保護具
眼/顔面の保護
顔面シールドおよび保護メガネ NIOSH(US)またはEN 166(EU)などの適切な政府機関の規
格で試験され、認められた眼の保護具を使用する。
皮膚及び身体の保護具
手袋を着用して取扱う。 使用前に、必ず手袋を検査する。 (手袋外面に触れずに)適切に手袋
を脱ぎ、本製品の皮膚への付着を避ける。 適用法令およびGLPに従い、使用後に汚染手袋を廃
棄する。 手を洗い、乾燥させる。
選ばれた防護手袋は、EU指令2016/425の仕様と、それから派生する規格EN374を満たすもので
なければならない。
フルコンタクト
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
飛沫への接触
材質: ニトリルゴム
最小厚: 0.11 mm
破過時間: 480 min
試験物質:Dermatril® (KCL 740 / Aldrich Z677272, Size M)
データソース:KCL GmbH, D-36124 Eichenzell, 電話 +49 (0)6659 87300, e-mail sales@kcl.de,
試験方法: EN374
EN374とは違った条件の下で、溶液の中、または他の物質と混ぜて使われる場合は、EC認可手
袋の供給業者に問い合わせる。 この勧告は単なる助言であり、予想される用途の特定状況に精
通した産業衛生専門家並びに安全管理者により評価されなければならない。 任意の使用方法に
ついて許可を受けていると理解すべきではない。
身体の保護
化学防護服, 特定の作業場に存在する危険物質の濃度および量に応じて、保護装置のタイプを選
択しなければならない。
呼吸用保護具
不快物質への暴露には、P95型(US)又はP1型(EU EN 143)呼吸用粒子保護具を使用する。
より高度な保護には、OV/AG/P99型(US)又はABEK-P2型(EU EN 143)呼吸用保護具カー
トリッジを使用する。 NIOSH(US)またはCEN(EU)などの適切な政府機関の規格で試験さ
れ、認められた呼吸用保護具および部品を使用する。
環境暴露の制御
安全を確認してから、もれやこぼれを止める。 物質が排水施設に流れ込まないようにする。 環
境への放出は必ず避けなければならない。

9. 物理的及び化学的性質

物理的状態

形状
固体(結晶)
無色、黄白色
臭い
無臭
臭いのしきい(閾)値
情報なし
pH
情報なし

融点・凝固点

70 ℃(Merck (2013)、SAX'S (2000)) 71 ℃(ICSC (2002)) 71~72 ℃(HODOC (1989))

沸点、初留点及び沸騰範囲

117 ℃(HODOC (1989)、ICSC (2002)、SRC)

引火点

情報なし

蒸発速度(酢酸ブチル=1)

情報なし

燃焼性(固体、気体)

情報なし

燃焼又は爆発範囲

情報なし

蒸気圧

0.00000661 mmHg(25 ℃、推測値)(SRC)

蒸気密度

情報なし

比重(相対密度)

情報なし

溶解度

水: 4.09 mg/L(25 ℃、実測値)(SRC) 水: 0.02 g/100mL その他の情報: アルコール、エーテル、アセトン、ベンゼン、クロロホルム、二硫化炭素に可溶(Merck (2013))

n-オクタノール/水分配係数

log Kow = 3.88(実測値)(SRC) log Kow = 3.9(ICSC (2002))

自然発火温度

情報なし

分解温度

情報なし

粘度(粘性率)

情報なし

10. 安定性及び反応性

10.1 反応性

データなし

10.2 化学的安定性

推奨保管条件下では安定。

10.3 危険有害反応可能性

データなし

10.4 避けるべき条件

データなし

10.5 混触危険物質

強酸化剤

10.6 危険有害な分解生成物

火災の場合:項目5を参照

11. 有害性情報

急性毒性

経口
【分類根拠】 (1)~(6)より、区分4が1件、区分外(国連分類基準区分5)が3件、区分外が2件該当する。よって件数の多い区分外(国連分類基準区分5)とした。
【根拠データ】 (1)ラットのLD50値:8,600 mg/kg(ACGIH(7th, 2001)、NTP TR166(1979)) (2)ラットのLD50値:4,573 mg/kg(雌)(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)) (3)ラットのLD50値:>5,200 mg/kg(雄)(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)) (4)ラットのLD50値:1,300 mg/kg (DFGOT vol. 5(1993)) (5)ラットのLD50値:2,500 mg/kg (DFGOT vol. 5(1993)) (6)ラットのLD50値:3,100 mg/kg (DFGOT vol. 5(1993))
経皮
【分類根拠】 (1)より、区分外とした。
【根拠データ】 (1)ウサギのLD50値:>2,000 mg/kg(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))
吸入:ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体である。
吸入:蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。なお、蒸気圧は0.116 Pa(Howard(1997)、推定値)で、わずかに昇華性がある。
吸入:粉じん及びミスト
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚腐食性及び皮膚刺激性

【分類根拠】 本物質は皮膚刺激性を示さないとする証拠(1)~(4)より、区分外とした。
【根拠データ】 (1)製造事業所の労働者へのばく露により酩酊様の影響が見られたものの、皮膚への刺激は発汗時に一般的に見られるものでもあり、全体の9%にしか微小な皮膚刺激性がみられず、ばく露量も特定できなかったとの報告がある(ACGIH(7th, 2001))。 (2)ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、n=6)で本物質を4時間適用したところ、PII(皮膚一次刺激指数)は0.13(最大8)だったとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018)) (3)ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、GLP準拠)で本物質を24時間適用したところ、Draizeスコア(紅斑)は0.25だが3日で完全に回復、Draizeスコア(浮腫)は0だったとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。 (4)ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG 404相当、GLP準拠)で本物質を24時間適用したところ、Draizeスコア(紅斑)は0.96だが7日で完全に回復、Draizeスコア(浮腫)は0だったとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。

眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性

【分類根拠】 (1)、(2)より、区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、新たな情報源を用いることで、旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】 (1)ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG405相当、n=6、GLP準拠)で本物質を適用したところ、24~72時間の平均Draizeスコアは角膜混濁で0(6/6匹)、虹彩炎で0.33(2/6匹)であり、7日で完全に回復したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。 (2)ウサギを用いた眼刺激性試験 (OECD TG405相当、n=6)で本物質を適用したところ、24~72時間の平均Draizeスコアは角膜混濁で0.17、虹彩炎で0.17、結膜発赤で0.94、結膜浮腫で0.67であり、7日で完全に回復したとの報告がある(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、REACH登録情報(Accessed Jun. 2018))。

呼吸器感作性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

皮膚感作性

【分類根拠】 (1)~(5)より、本物質はヒトに対して皮膚感作性を有すると考えられるため、区分1とした。なお、新たな情報源を用いることで、旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】 (1)ジスルフィラム錠を取り扱った40歳女性看護師の前腕と顔面に10カ月間断続的に皮膚炎が見られ、ゴム手袋を着用後にも悪化したが、休日や週末に回復し、パッチテストを行ったところ本物質やチウラム混合物に陽性反応を示したとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (2)本物質は皮膚感作性を有するだけでなく、ジチオカーバメートと交差反応するとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (3)接触性皮膚炎が疑われた作業者408人に対してゴム化学品に対するパッチテストで185人に反応がみられ、うち92人が本物質に対して反応を示したとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (4)ヒト2,260人に対する感作性試験で108人(4.8%)に本物質に対する反応がみられ、うち78人にはチウラム製剤の成分に対する反応性もみられたとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (5)接触性皮膚炎患者3,851人に対するパッチテストで、145人(3.8%)にチウラム製剤に対して反応が、さらにそのうち35人中9人(29%)で本物質に対する反応が見られたとの報告がある(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。
【参考データ等】 (6)厚生労働省は本物質を皮膚感作性ありと結論づけている(厚労省初期リスク評価書(2018))。 (7)EU CLPでは本物質をSkin Sens. 1に分類している。

生殖細胞変異原性

【分類根拠】 (1)~(3)より、ガイダンスに従い分類できないとした。
【根拠データ】 (1)In vivo体細胞変異原性試験では、ラットの染色体異常試験、マウスの小核試験で陰性であった(厚労省初期リスク評価書(2018))。 (2)In vivo体細胞遺伝毒性試験では、マウスの骨髄と精原細胞を用いた姉妹染色分体交換(SCE)試験において、SCE数の増加が報告されている(NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (3)In vitro体細胞変異原性試験では、ヒト末梢血リンパ球による染色体異常試験で陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性であった (厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT vol. 5(1993)、ACGIH(7th, 2001)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。
【参考データ等】 (4)その他in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験では陰性、哺乳類培養細胞の姉妹染色分体交換試験、DNA鎖切断試験で陽性であった(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT vol. 5(1993)、ACGIH(7th, 2001)、NICNAS IMAP(Accessed Jun. 2018))。 (5)厚生労働省は本物質の遺伝毒性は「判断できない」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2018))。

発がん性

【分類根拠】 発がん性に関して、利用可能なヒトを対象とした報告はない。 (2)~(4)の初期の試験結果は信頼性が不十分と判断されたため、(1)の既存分類も踏まえ分類できないとした。なお、厚生労働省は本物質のヒトに対する発がん性については「判断できない」と結論している(厚労省初期リスク評価書(2018))。
【根拠データ】 (1)国内外の分類機関による既存分類では、IARCがグループ3(IARC 12(1976))、ACGIHがA4(ACGIH(7th, 2001))に分類している。
【参考データ等】 (2)2系統のマウスに100 mg/kg/dayを4週齢まで、その後323 ppmで約78週齢まで混餌投与した試験で、1系統の雄に肺腺腫及び肝腫瘍(ヘパトーマ)の増加、他1系統の雄に皮下の線維肉腫の増加がみられた。化学物質経口投与後の皮下の線維肉腫は極めて異例で、上記の知見には疑問があるとIARCは指摘している(IARC 12(1976)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (3)雄ラットに本物質を週2回強制経口投与(500 mg/kg/week、投与期間不記載)した試験で、平均生存期間が65週間で2例に精巣の良性間細胞腫がみられたが、IARCのワーキンググループは試験期間の不十分な試験と指摘した(IARC 12(1976)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (4)雌雄ラットに300又は600 ppmを107週間、雄マウスに500又は2,000 ppm、雌マウスに100又は500 ppmを108週間混餌投与した発がん性試験において、ラット、マウスの雌雄の投与群に用量相関性のある体重の低値が試験期間を通してみられたものの、発がん性は認められなかった(NTP TR166(1979)、厚労省初期リスク評価書(2018))。

生殖毒性

【分類根拠】 (1)のヒトに関する報告や、(2)の動物実験の報告からは、催奇形性の確定的判断は困難であり、その他発生影響は分類根拠とすべき所見はないと判断される。一方で(3)より、ラットの2世代試験において、親動物の一般毒性用量で児動物数の減少がみられたことから、区分2と分類した。なお、厚生労働省は催奇形性や胎児毒性に重きをおいた評価として、本物質の生殖毒性は「判断できない」と結論付けている(厚労省初期リスク評価書(2018))。
【根拠データ】 (1)本物質の摂取に伴う出生児の奇形(内反足、顔面奇形、あざらし肢症など)が複数報告されているが、他の物質の影響を除外することが困難であり、本物質がヒトへの催奇形性を有するとは判断できないと指摘されている(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018))。 (2)妊娠ラット、又は妊娠マウスを用いた多くの発生毒性試験で、胎児体重の低値や骨化遅延など胎児毒性を示すデータはあるが、奇形発生の増加を示唆する報告はない(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018))。 (3)ラットを用いた混餌投与による2世代試験では、500又は1,000 ppmの投与により親動物に体重増加抑制と交配一組当たりの同腹児数及び産児数の減少がみられた(厚労省初期リスク評価書(2018)、DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018))。
【参考データ等】 (4)本物質は慢性アルコール中毒に対する抗酒薬として使用されているが、妊婦に対する安全性が確立されていないため、妊婦又は妊娠している女性に対しては禁忌とされている(医療用医薬品集2018(2017))。 (5)妊娠ハムスターに経口投与、妊娠モルモットに経口投与した試験では奇形発生がみられているが、溶媒の影響や用量相関性の検討が不十分などの理由により、結果の解釈は難しい(厚労省初期リスク評価書(2018))。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

【分類根拠】 (1)~(3)より、本物質の急性ばく露による標的臓器(所見)は複数の症例でみられた神経系(抑うつ、反射・痛覚消失、神経障害など)、腎臓(アルブミン尿)と考えられ、区分1(神経系、腎臓)とした。なお、消化管(嘔吐など)は1例のみの症例報告のため、標的臓器とはしなかった。旧分類とは異なる情報源を用いることにより、腎臓を標的臓器として追加した。
【根拠データ】 (1)本物質3 gを経口摂取し、急性中毒症状を生じた10歳の少女の症例では20時間後に眠気、瞳孔散大、2日目に嘔吐、不安、抑うつ、4日目に運動失調、アルブミン尿を伴う腎盂腎炎、3~6日目に記憶喪失がみられたとの報告がある(DFGOT(1993, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (2)本物質10 g を経口摂取10時間後に意識消失、チアノーゼ、呼吸困難、反射及び痛覚の消失を示した3歳7ヵ月の小児の症例、本物質10 g を摂取した24歳の女性が悪心、嘔吐、胃腸炎、頭痛、運動失調、アルブミン尿の増加を示したとの報告がある(DFGOT(1993, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。 (3)本物質10 g を摂取した15歳の少年では眼振、痙攣、昏睡など神経障害、記憶・認知障害がみられた報告がある(DFGOT(1993, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

【分類根拠】 (1)~(2)のヒトの知見から区分1(神経系、心血管系、消化管、肝臓)、(3)から区分1(甲状腺)に分類できる。よって、区分1(神経系、心血管系、甲状腺、消化管、肝臓)とした。なお、旧分類とは異なる情報源を用いて、分類結果を見直した結果、標的臓器を一部追加(心血管系、消化管)、又は削除(内分泌系:ヒトで一部甲状腺関連ホルモンや性腺刺激ホルモンなどホルモンレベルの変動の報告はあるが、ラットの甲状腺以外に内分泌系臓器に影響がみられていない)した。
【根拠データ】 (1)本物質は慢性アルコール中毒に対する抗酒薬である。重大な副作用は、精神神経系障害で、まれに重篤な脳障害(見当織障害、記憶障害、錯乱等)が現れたとの報告がある。また、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、LDH、ALP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害、黄疸が現われることがある(医療用医薬品集2018(2017))。 (2)その他の副作用として消化管障害(悪心、嘔吐、腹部痙攣、下痢、便秘)、神経障害(眠気、頭痛、多発性神経障害、末梢神経炎)、心血管障害(蒼白、低血圧、血管拡張、頻脈、不整脈、心筋梗塞)に加えて、非常にまれではあるが、肝機能障害、肝炎、黄疸を呈し、重篤な場合には肝性昏睡をきたし死亡する症例も報告されている(厚労省初期リスク評価書(2018))。 (3)ラットに本物質25 mg/kg/dayを30日間経口投与(90日換算:8.3 mg/kg/day、区分1の範囲)した結果、甲状腺の重量増加と過形成がみられた(DFGOT(1997, Accessed Jun. 2018)、厚労省初期リスク評価書(2018))。

吸引性呼吸器有害性

【分類根拠】 データ不足のため分類できない。

12. 環境影響情報

12.1 生態毒性

魚毒性
LC50 - Poecilia reticulata (グッピー) - 0.187 mg/l - 96 h
(OECD 試験ガイドライン 203)
ミジンコ等の水生無脊 椎動物に対する毒性
LC50 - Daphnia magna (オオミジンコ) - 0.12 mg/l - 48 h
藻類に対する毒性
成長抑制 EC50 - Chlorella pyrenoidosa - 1.8 mg/l - 96 h
魚毒性(慢性毒性)
死亡率 LOEC - Oncorhynchus mykiss (ニジマス) - 0.006 mg/l - 60 d

12.2 残留性・分解性

データなし

12.3 生体蓄積性

データなし

12.4 土壌中の移動性

データなし

12.5 PBT および vPvB の評価結果

化学物質安全性評価が必要ではない/行っていないため、PBT/vPvB評価データはない。

12.6 内分泌かく乱性

データなし

12.7 他の有害影響

非該当
オゾン層への有害性
長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性。

13. 廃棄上の注意

13.1 廃棄物処理方法

製品
免許を有する廃棄物処理業者に、余剰物で再使用不可の溶液として処理を依頼する。 可燃性溶剤に溶解または混合し、アフターバーナーとスクラバーが備えられた化学焼却炉で焼却する。汚染容器及び包装製品入り容器と同様に処分する。

14. 輸送上の注意

14.1 国連番号

ADR/RID (陸上規制): 3077    IMDG (海上規制): 3077    IATA-DGR (航空規制): 3077

14.2 国連輸送名

(Tetraethylthiuramdisulfide)
IATA-DGR (航空規制): Environmentally hazardous substance, solid, n.o.s.
(Tetraethylthiuramdisulfide)
IMDG (海上規制): ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, SOLID, N.O.S.
エチルチウラム二硫化物)
ADR/RID (陸上規制): ENVIRONMENTALLY HAZARDOUS SUBSTANCE, SOLID, N.O.S. (テトラ

14.3 輸送危険有害性クラス

ADR/RID (陸上規制): 9    IMDG (海上規制): 9    IATA-DGR (航空規制): 9

14.4 容器等級

ADR/RID (陸上規制): III IMDG (海上規制): III IATA-DGR (航空規制): III

14.5 環境危険有害性

該当
ADR/RID: 該当 IMDG 海洋汚染物質(該当・非該当): IATA-DGR (航空規制): 該当

14.6 特別の安全対策

14.7 混触危険物質

EHSマーク(ADR 2.2.9.1.10, IMDGコード 2.10.3)5 kg / L 以下で、危険物クラス 9 に該当しないパッケー
危険物(液体 >5Lまたは固体 >5kg)を有する内装容器を含む、単一容器および複合容器に必要とされる
詳細情報
強酸化剤

15. 適用法令

労働安全衛生法

名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(法第57条、施行令第17条別表第3第1号並びに施行令第18条及び第18条の2別表第9)

化審法

優先評価化学物質(法第2条第5項)

化学物質排出把握管理促進法 (PRTR法)

第一種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)

16. その他の情報

略語と頭字語

TWA: 時間加重平均
STEL: 短期暴露限度
RID: 鉄道による危険物の国際運送に関する規則
LD50: 致死量 50%
LC50: 致死濃度 50%
IMDG: 国際海上危険物
IATA:国際航空運送協会
EC50: 有効濃度 50%
CAS: ケミカルアブストラクトサービス
ADR: 道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定

参考文献

【1】労働安全衛生法 ウェブサイト https://www.mhlw.go.jp
【2】化学物質審査規制法(化審法)https://www.env.go.jp
【3】化学物質排出把握管理促進法(PRTR法) https://www.chemicoco.env.go.jp
【4】NITE化学物質総合情報提供システム (NITE-CHRIP)https://www.nite.go.jp/
【5】カメオケミカルズ公式サイト http://cameochemicals.noaa.gov/search/simple
【6】ChemIDplus、ウェブサイト http://chem.sis.nlm.nih.gov/chemidplus/chemidlite.jsp
【7】ECHA - 欧州化学物質庁、ウェブサイト https://echa.europa.eu/
【8】eChemPortal - OECD 化学物質情報グローバルポータル、ウェブサイトhttp://www.echemportal.org/echemportal/index?pageID=0&request_locale=en
【9】ERG - 米国運輸省による緊急対応ガイドブック、ウェブサイトhttp://www.phmsa.dot.gov/hazmat/library/erg
【10】有害物質に関するドイツ GESTIS データベース、ウェブサイトhttp://www.dguv.de/ifa/gestis/gestis-stoffdatenbank/index-2.jsp
【11】HSDB - 有害物質データバンク、ウェブサイト https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/hsdb.htm
【12】IARC - 国際がん研究機関、ウェブサイト http://www.iarc.fr/
【13】IPCS - The International Chemical Safety Cards (ICSC)、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.home
【14】Sigma-Aldrich、ウェブサイト https://www.sigmaaldrich.com/
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