急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:雄:4,904 mg/kg、雌:4,899 mg/kg (EPA Pesticide (2004)) (2) ラットのLD50:4,917 mg/kg (EC Draft Renewal Assessment Report (2016))
経皮
【分類根拠】 (1) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ウサギのLD50: > 2,000 mg/kg (EPA Pesticide (2004)、EC Draft Renewal Assessment Report (2016))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分を特定できないため分類できない。
【参考データ】 (1) ラットのLC50: > 3.0 mg/L (EPA Pesticide (2004)、EC Draft Renewal Assessment Report (2016))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) 本物質500 mgをウサギに4時間半閉塞適用した皮膚刺激性試験において紅斑,浮腫等の異常は認められず、皮膚に刺激性を有しないものと判定された (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。 (2) ウサギを用いた試験で非刺激性であった(EPA Pesticide (2004))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2Bとした。
【根拠データ】 (1) ウサギを用いた眼刺激性試験において角膜及び虹彩の刺激性変化がみられたが72時間後には消失した。結膜にも発赤や浮腫が投与後1時間から認められたが、72時間後には消失したことから、眼粘膜に対し刺激性がある (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。 (2) ウサギを用いた試験で、軽度の刺激性が示された(EPA Pesticide (2004))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、詳細不明) において皮膚に特記すべき変化は認められず、陰性と判定された (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。 (2) モルモットを用いた試験では、陰性の報告がある(EPA Pesticide (2004))。
生殖細胞変異原性
【分類根拠】 (1), (2) より一部のin vitro試験において陽性知見が認められたが、他のin vitro試験およびin vivo試験では陰性を示し、専門家判断に基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、マウス骨髄の小核試験、ラット肝細胞の不定期DNA合成試験で陰性である (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998)、EC Draft Renewal Assessment Report (2016))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞の染色体異常試験で陰性又は陽性、ラット初代肝細胞の不定期DNA合成試験で陰性である (HSDB (Access on June 2019)、農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998)、EC Draft Renewal Assessment Report (2016))。
発がん性
【分類根拠】 (2)、(3) からは、動物種2種で陰性の結果が得られているが、(1) の既存分類結果及び (4) の本邦で実施された試験でマウスで腎臓腫瘍の発生増加の報告があることを踏まえて、区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、EU CLP分類でCarc.2 (EU CLP分類 (Access on June 2019)) に分類されている。 (2) ラットに最高7,500 ppm (雄: 352 mg/kg/day、雌: 518 mg/kg/day) で2年間混餌投与したが、腫瘍の発生増加はみられなかった (EPA Pesticide (2004))。 (3) マウスに最高1,000 mg/kg/dayで18ヵ月間混餌投与したが、腫瘍の発生増加はみられなかった (EPA Pesticide (2004))。 (4) ラット及びマウスに本物質を2年間混餌投与した試験において、ラットでは腫瘍の発生は認められなかったが、マウスでは10,000 ppmで腎臓皮質上皮性腫瘍の増加が雄に認められた (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻第2号 (1998))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)、(2) より、2世代生殖毒性試験において生殖毒性はみられていない。しかし、 (3)、(4) より母動物毒性がみられる用量で、催奇形性はみられないものの胚吸収増加、生存胎児数の減少等がみられたことから、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ラットを用いた経口経路での2世代生殖毒性試験において、親動物毒性 (体重増加抑制等) がみられているが生殖影響はみられていない (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。 (2) ラットを用いた経口経路での2世代生殖毒性試験において、親動物に腎臓の重量増加、化膿性炎症、嚢胞、化膿性腎盂腎炎及び間質性腎炎がみられ、児動物の生存率減少がみられているが生殖影響はみられていない (HSDB (Access on June 2019))。 (3) 雌ラットの妊娠6~15日に経口投与した発生毒性試験において、母動物に嗜眠、運動失調、腹部及び後肢の痂皮形成、眼球の退色等、及び体重の低値がみられる用量で、胎児重量の低値、死亡 (1例)、早期及び後期胚吸収増加、胸骨分節の未骨化、第13肋骨の骨化減少がみられた。催奇形性はみられなかった (HSDB (Access on June 2019))。 (4) 雌ウサギの妊娠6~18日に経口投与した発生毒性試験において、母動物に体重及び摂餌量の減少がみられる用量で、流産 (2例) がみられたほか、死胚数の増加傾向と生存胎児数の減少傾向が認められた。催奇形性はみられなかった (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 本物質のヒトでの単回ばく露に関する報告はない。実験動物での (1)、(2) の情報に基づいて、区分2 (中枢神経系)、区分3 (気道刺激性) とした。用量と投与経路の記載が不明確なため分類根拠としなかったが、参考データ (3) の結果からも、本物質の中枢神経系への影響が示唆される。
【根拠データ】 (1) ラット及びマウスの単回経口投与試験において、音及び接触に対する反射消失、自発運動減少、横転、側臥、腹臥、背臥、間代性痙攣、体温低下、流涎、流涙血様分泌物 (眼)、眼瞼下垂、眼瞼閉鎖及び被毛の汚れがみられた (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。これらの影響がみられた用量の記載はないが、LD50値付近の1,500~2,800 mg/kg周辺の用量 (区分2~区分2超) でみられたと考えられる。 (2) ばく露時間は不明であるが、ラットの単回吸入ばく露試験において、ばく露濃度1.82 mg/Lでばく露直後からばく露1日後まで鼻面赤化がみられ、ばく露1日後から5日後まで鼻孔からの流出物が認められた (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。
【参考データ等】 (3) 本物質の0.3%CMC懸濁液もしくは50%PEG-400溶液を雄マウス又は雄ラットにそれぞれ強制経口もしくは静脈内投与した試験で、検体投与による影響として自発運動の減少,麻酔増強作用,鎮痛作用及び電撃痙攣の抑制作用が認められ、中枢神経系に対しては抑制的に作用するものと判断された。行動観察では1,000 mg/kg投与群に自発運動の減少,歩行異常,眼瞼下垂を呈して死亡する例が認められ,これらの死因は中枢神経系の抑制に起因するものと考えられた (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)~(3) より、区分に該当しない (経口) とした。なお、他経路については情報がなく、データ不足のため分類できない。
【根拠データ】 (1) マウスに本物質900~7,000 ppm を90日間混餌投与した試験において、3,500 ppm あるいは7,000 ppm (ガイダンス値換算: 雄: 609、1,288 mg/kg/day、雌: 788、1,683 mg/kg/day、区分2超) でビリルビン増加又は増加傾向、肝臓及び腎臓の相対重量増加、腎臓の軽微な間質及び腎盂のリンパ球浸潤がみられた (HSDB (Access on June 2019))。 (2) ラットに本物質200~5,000 ppmを90日間混餌投与した試験において、5,000 ppm (ガイダンス値換算: 250 mg/kg/day、区分2超) で肝臓重量増加がみられた (HSDB (Access on June 2019))。 (3) マウスに本物質50~10,000 ppmを24ヵ月間混餌投与した試験において5,000 ppm (ガイダンス値換算: 750 mg/kg/day、区分2超) 以上の雄で腎臓の増殖性病変と副腎被膜下細胞増生の軽度増加、10,000 ppm (ガイダンス値換算: 750 mg/kg/day、区分2超) の雄で腎臓尿細管上皮の萎縮と過形成を含む増殖性病変がみられた (農薬工業会「日本農薬学会誌」第23巻 第2号 (1998))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。