急性毒性
経口
【分類根拠】 (1)~(6) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:8,400~15,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)、IARC 30 (1983)) (2) ラットのLD50:9,000 mg/kg (ACGIH (7th, 2014)、EPA Pesticide (2004)、食品安全委員会 農薬評価書 (2018)) (3) ラットのLD50:> 5,000 mg/kg (JMPR (2004)) (4) ラットのLD50:12,600 mg/kg、> 17,000 mg/kg (IPCS, PIM 98 (1992)) (5) ラットのLD50:雄 : 7,000 mg/kg、雌 : 6,170 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2018)) (6) ラットのLD50:雄 : 3,570 mg/kg、雌 : 4,320 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))
経皮
【分類根拠】 (1)~(4) より、区分に該当しない。
【根拠データ】 (1) ラットのLD50:> 2,000 mg/kg (EPA Pesticide (2004)) (2) ラットのLD50:> 5,000 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2018)) (3) ウサギのLD50:> 4,500 mg/kg、> 9,000 mg/kg (HSDB (Access on July 2019)) (4) ウサギのLD50:> 5,000 mg/kg (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))
吸入: ガス
【分類根拠】 GHSの定義における固体であり、ガイダンスの分類対象外に相当し、区分に該当しない。
吸入: 蒸気
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
吸入: 粉じん及びミスト
【分類根拠】 (1) より、区分3とした。
【根拠データ】 (1) ラットのLC50 (4時間、粉じん) : (雄) 0.72 mg/L、(雌) 0.87 mg/L (EPA Pesticide (2004)、食品安全委員会 農薬評価書 (2018))
【参考データ等】 (2) ラットのLC50 (2時間) : > 5.7 mg/L (4時間換算値 : 2.85 mg/L) (ACGIH (7th, 2014)、HSDB (Access on July 2019))
皮膚腐食性及び皮膚刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分2とした。
【根拠データ】 (1) ヒト (白人男女) による皮膚刺激性試験でいずれも刺激性を示し中等度から重度の紅斑及び浮腫がみられた (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。 (2) 本物質に対する過剰のばく露により眼刺激性、皮膚刺激性、感作性を示す (HSDB (Access on July 2019))。
眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1とした。
【根拠データ】 (1) 本物質をウサギの眼に適用した眼刺激性試験で24/48/72hのスコアは28~105 (Max 110) であり、21日後にも回復しなかった (ECETOC TR48 (1998))。 (2) 本物質はヒトの眼に対し重度刺激性物質である (EPA Pesticide (2004))。
【参考データ等】 (3) 本物質は眼、鼻、喉、肺の粘膜を刺激する (DFGOT vol.1 (1990))。 (4) EU-CLP分類でEye Dam. 1 (H318) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。
呼吸器感作性
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
皮膚感作性
【分類根拠】 (1)、(2) より、区分1Aとした。
【根拠データ】 (1) 本物質によるヒトパッチテストで高頻度 (5%) の陽性の報告がある (ACGIH (7th, 2014))。 (2) 本物質のヒトに対する過剰のばく露は眼刺激性、皮膚刺激性、感作性を示す (HSDB (Access on July 2019))。 (3) ヒトにおいて本物質のばく露に起因すると思われる皮膚炎、蕁麻疹、持続性の紅斑の報告がある (ACGIH (7th, 2014))。 (4) モルモットを用いた皮膚感作性試験 (マキシマイゼーション法、皮内感作:0.1%、貼付感作:75%、惹起:30%) において陽性 (陽性率40%) を示した (農薬抄録 (2016))。 (5) OECD TG 406 (マキシマイゼーション法、皮内感作:0.1%、貼付感作:50%) に準拠したモルモット皮膚感作性試験で陽性率100%を示したと報告されている (REACH登録情報 (Access on July 2019))。
【参考データ等】 (6) 本物質はモルモットに対して中等度感作性物質である (EPA Pesticide (2004))。 (7) EU-CLP分類でSkin Sens. 1 (H317) に分類されている (EU CLP分類 (Access on July 2019))。
生殖細胞変異原性
(3) 複数の評価書で、変異原性について、細胞試験系では十分な証拠が認められるが、哺乳類における証拠は不十分であると結論付けられている (IARC 30 (1983)、IPCS, PIM 98 (1992)、ACGIH (7th, 2014))。食品安全委員会では、in vitroでは遺伝毒性を示すが、発がん標的臓器を含め、生体にとって問題となる遺伝毒性はないと判断している (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。in vivo においては、マウスを用いた小核試験及び染色体異常試験で陽性の報告があるが、これらは全て同一文献に由来するもので、他の報告では陰性であり、陽性結果に再現性は認められていない (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。
【参考データ等】 (4) 本物質の変異原性は生体内の代謝により速やかに消失し得るとの報告がある (ACGIH (7th, 2014))。
【分類根拠】 (1)~(3) より、in vitro試験では多くの陽性知見が認められ、in vivo試験においても一部の試験で陽性の報告がある。但し、in vivo試験の多くが陰性の結果であることや証拠の重み付けも考慮し、専門家判断に基づき、ガイダンスにおける分類できないに相当し、区分に該当しないとした。
【根拠データ】 (1) in vivoでは、トランスジェニックマウスを用いた遺伝子突然変異試験では、肝臓及び十二指腸において陰性 (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。マウスの優性致死試験やマウス骨髄の小核試験、マウス及びラットの体細胞染色体異常試験で陰性 (一部陽性)、マウススポット試験、ラット肝臓の不定期DNA合成試験で陰性の報告がある (ACGIH (7th, 2014)、IARC 30 (1983)、食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。マウスの精原細胞及び精母細胞を用いた染色体異常試験では陽性の結果があるが、精原細胞の染色体異常の増加は高用量群でのみ認められた (食品安全委員会 農薬評価書 (2018)、農薬抄録 (2016))。 (2) in vitroでは、細菌の復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞の染色体異常試験、HPRT試験及びマウスリンフォーマ試験で陽性の報告があるが、一部の代謝活性系では変異原性の減弱・消失がみられた (ACGIH (7th, 2014)、IARC 30 (1983)、食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。
発がん性
【分類根拠】 IARCではグループ3に分類されているが、最近の評価であるACGIHでA3、EU CLP分類でCarc.2に分類されていることから、ガイダンスに従い区分2とした。
【根拠データ】 (1) 国内外の分類機関による既存分類では、IARCでグループ3 (IARC Sup7 (1987))、ACGIHでA3 (ACGIH (7th, 2014))、EUでCarc.2 (EU CLP分類 (Access on July 2019)) に分類されている。 (2) ラットに本物質を2年間混餌投与した慢性毒性/発がん性併合試験及び130週間混餌投与した発がん性試験では、腫瘍性病変の発生頻度の増加は認められなかった (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。 (3) マウスに本物質を26ヵ月及び22ヵ月間混餌投与した2つの発がん性試験において、雌雄で十二指腸腺腫及び腺がんの増加が認められた (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。
生殖毒性
【分類根拠】 (1)、(2) より、母動物毒性がみられる用量で胎児の外表、内臓及び骨格異常等が認められていることから、区分2とした。 なお、新たな情報源を引用したため、分類結果が変更となった。
【根拠データ】 (1) 雌ウサギの妊娠7~19日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に糞量減少及び下痢、体重減少等がみられる用量で、着床後胚損失割合及び死亡胚数増加、流産 (1例)、外表異常 (脳瘤、躯幹全体の重度の異常、外脳症/眼瞼開存等、臍ヘルニア等)、内臓異常 (中脳水道の極度な拡張、肝臓表面ののう胞)、骨格異常 (猿頭症、上顎骨癒合、第11椎弓欠損、第11肋骨欠損、母指欠損) 等が報告されている (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。 (2) 雌ハムスターの妊娠5~10日に強制経口投与した発生毒性試験において、母動物に死亡率増加等がみられる用量で吸収胚増加、生存胎児数減少、胎児重量低値、性比に差 (雄:雌=127:83)、尾の変形、全身浮腫、複合異常等が報告されている (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。
【参考データ等】 (3) ラットを用いた混餌投与での3世代生殖毒性試験において、親動物、児動物共に体重増加抑制がみられ、胎児重量の低値等がみられているが、生殖影響及び催奇形性はみられていない (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。
特定標的臓器毒性 (単回ばく露)
【分類根拠】 ヒトでの本物質の単回ばく露に関する報告はない。実験動物での (1) の情報より区分1 (呼吸器) とした。新たな情報により、旧分類から区分を変更した。
【根拠データ】 (1) 本物質の粉じん0.56、0.71、1.36 mg/Lをラットに4時間単回吸入ばく露した試験において、0.56 mg/L (区分1相当) 以上で生存動物に流涎、血涙、鼻からの着色分泌物、呼吸困難が認められた。肉眼的病理所見では、ばく露群で呼吸器系 (肺、咽頭、気管支) への白色物質の貯留が用量依存的に認められた。死亡例は最小用量の0.56 mg/Lからみられ、LC50値は雄で0.72 mg/L、雌で0.87 mg/Lであった。各ばく露群での死亡数の記載はないが、LC50値未満の0.56、0.71 mg/Lばく露群では過半数が生存したと考えられる (食品安全委員会 農薬評価書 (2018)、農薬抄録 (2016))。農薬抄録 (2016) には、これらの肉眼的病理所見は動物の死亡が肺機能不全によるものであることを示唆すると記載されている。
特定標的臓器毒性 (反復ばく露)
【分類根拠】 (1)、(2)より、実験動物への経口投与においてガイダンス値の範囲で明らかな毒性はみられておらず、経口経路については区分に該当しないと考えられ、(3) より、経皮経路についても区分に該当しないと考えられる。吸入経路については情報が得られておらず、分類できない。
【根拠データ】 (1) ラットの32週間及び25週間混餌投与試験、マウスの28日間混餌投与試験で、ガイダンス値の範囲までで有害影響は示されていない (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。 (2) ラット及びマウスの慢性毒性試験、慢性毒性/発がん性併合試験、発がん性試験の結果、ガイダンス値の範囲までで有害影響は示されていない (食品安全委員会 農薬評価書 (2018)、EPA Pesticide (2004)、NTP TR15 (1977))。 (3) ウサギを用いた21日間の経皮毒性試験において、12.5 mg/kg/day (90日換算: 3 mg/kg/day、区分1の範囲) 以上で皮膚への影響がみられている以外はガイダンス値の範囲までで有害影響は示されていない (食品安全委員会 農薬評価書 (2018))。
誤えん有害性*
【分類根拠】 データ不足のため分類できない。
* JIS Z7252の改訂により吸引性呼吸器有害性から項目名が変更となった。