急性毒性
経口
ラットを用いた経口投与試験のLD50値として、1,830 mg/kg(環境省リスク評価第4巻(2005)、DFGOT vol.3 (1992))、>5,000 mg/kg(DFGOT vol.3 (1992))、756 mg/kg(HSDB (2004))との記述がある。複数のデータが該当する区分を採用し、区分4とした。
経皮
データがないので分類できない。
吸入
吸入(ガス): GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
吸入(蒸気): データがないので分類できない。
吸入(粉じん): データがないので分類できない。
皮膚腐食性・刺激性
ウサギの皮膚に本物質500 mgを4時間投与した試験において、「刺激性なし」(DFGOT vol.3 (1992))との記述がある。一方、HSDB (2004)には、ヒトへの健康影響として「皮膚に対しmoderately irritating」との記述がある。他にデータがないので、データ不足のため分類できない。
眼に対する重篤な損傷・刺激性
動物については、ウサギの眼瞼の結膜嚢に本物質100 mgを投与した試験で「mildな角膜混濁、moderateからsevereな結膜の発赤と腫脹が2/3匹に見られ、これらの症状は72時間後に消失」(DFGOT vol.3 (1992))と記述されている。ヒトについては、HSDB (2004)のヒト健康影響の項に「一部の人では3-5 ppmでminimalな眼刺激が生じ得る」との記述、環境省リスク評価第4巻(2005)に「眼を刺激し、急性症状として眼の発赤や痛み」との記述がある。以上から、区分2Bとした。
呼吸器感作性又は皮膚感作性
呼吸器感作性:データがないので分類できない。
皮膚感作性:データがないので分類できない。
生殖細胞変異原性
体細胞in vivo変異原性試験(マウス赤血球を用いた小核試験)で「弱陽性」(DFGOT vol.3 (1992))との記述があるが、この試験については、異性体1・2・4-トリクロロベンゼンに関するEU-RAR (2003)に、「試験プロトコールがあまり適切でないので、陽性結果の妥当性には疑問が残る」旨、記述されている。一方、in vitro変異原性試験(チャイニーズハムスター細胞を用いた染色体異常試験、ネズミチフス菌を用いたAmes試験)は「陰性」(CaPSAR (1993)、NTP DB(Access on December 2008)、DFGOT vol.3 (1992))との記述がある。以上より、分類するための十分なデータがないので、分類できない。
発がん性
主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データもないので分類できない。
生殖毒性
環境省リスク評価第4巻(2005)に、妊娠6-15日のラットに強制経口投与した試験で「母動物に肝臓重量の有意な増加、ヘモグロビン濃度及びヘマトクリット値の減少が見られたが、胎児数、胎児の体重、骨格及び内臓の奇形はみられなかった」旨、記述されており、同じ試験についてHSDB(2004)にはさらに、「妊娠結果の異常はばく露と関係ないようである」との記述もある。また、妊娠6-15日のラットに強制経口投与した試験において「母動物に肝臓、甲状腺の病変、ヘマトクリット値及びヘモグロビン濃度の減少が見られた。胎児に軽度な骨形成の変化(osteogenic changes)が見られたが、重大な奇形は見られない」(Patty (5th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))との記述があり、DFGOT vol.3 (1992)には、「催奇形性試験により胚毒性、胎児毒性はないことが示された」旨、記述されている。この他、ラットを用いた13週間混餌投与試験で「雌雄の生殖器官の重量及び組織への影響はみられなかった」(環境省リスク評価第4巻(2005))との記述がある。しかし、生殖機能への影響に関するデータがなく、データ不足のため分類できない。
特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)
ヒトについて、HSDB(2004)の臨床影響の項に、「吸入ばく露の結果、頭痛、鼻漏、咳、息切れ、胸痛、気管支痙攣、稀には上気道の腫脹や急性肺障害を生じるかもしれない」、「吸入後の咳、頻呼吸、喘鳴は一般的」、「経口摂取した場合、吐き気、嘔吐、下痢の可能性がある」との記述がある。また環境省リスク評価第4巻(2005)のヒトへの影響の項に「気道を刺激し、急性症状として咳、咽頭痛、経口摂取による腹痛、下痢、吐き気、嘔吐が現れる」と記述されている。以上より、区分2(消化器系)、区分3(気道刺激性)とした。
特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)
ラットを用いた13週間混餌投与試験において「雄で肝臓、腎臓の重量増加、雌雄で肝細胞容積の増大や核大小不同の増加、甲状腺で濾胞の縮小、濾胞上皮細胞の高さの増大、コロイド密度の低下がみられた」(環境省リスク評価第4巻(2005)、CaPSAR(1993)、Patty (5th, 2001)、DFGOT vol.3 (1992))旨、記述されている。これらの症状は区分2のガイダンス値の範囲内で見られているので、区分2(肝臓、甲状腺)とした。 なお、ヒトについては、「長期間、クロロベンゼン類に作業着を浸して洗濯していた女性が再生不良性貧血を発症した」(環境省リスク評価第4巻(2005)、Patty(5th, 2001))旨の記述、「トリクロロベンゼン類にばく露された労働者28人の中に、頭痛、めまい、し眠、消化不良を訴える者が現れた」(環境省リスク評価第4巻(2005))旨の記述があるが、異性体が特定されておらず、本物質による影響かどうか不明なため、採用しない。
吸引性呼吸器有害性
データがないので分類できない。